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「ちわっす。九条さん」
「おお。儲かってるか? 」
「この間はすいませんしたっ」
黒服とホストは客引きという面では一見、見分けが付かない。真冬以外は黒服はベスト姿が多いけど、ホストの方が顔がいいとも言いきれない。結局はどっちも女を売る商売だ。
「すみません。うちの奴ら迷惑かけまして。お詫びしますんで飲んでいって下さい」
サキュバスの店長が頭を下げる。この店も元は老舗だったが、オーナーが金持って逃げてレオとか言う若手経営者が買い取ったらしい。サキュバス……? の意味なんて、何回聞いても理解できない。
「野郎の顔見ながら飲んでもつまんねーから遠慮しとく。つーかどうなった? あいつら」
「あ……あ、マナトとライトは九条さんの知り合いの子にウリやらせたって言うんで、うちの代表が系列の売り専に飛ばしました。売り掛けも残ってるんで飛ばない様に監視してます」
「……口出す気はねぇけど、無理やり未成年の女にウリさせんのは止めておけよ。あとあと面倒くせぇから」
「は、はい。気を付けます」
わんちゃんと沙羅の顔が頭をよぎる。ヤクザの知り合いに手を出した。という名目でマナトとライトは表から消えた。
その実、サキュバスのやつらは、ヤクザの俺に顔を立てるような形で、厄介者を追い出しただけ。ツラの良いマナトたちを囲い、売り専で稼がせる。若手経営者もなかなかやり手だ。
沙羅を助けた。なんてつもりは無いが、ヤクザが小さな問題に首を突っ込むと、磁石を砂場に突っ込んだくらいにゴミ屑がまとわりついてくる。
「ほらやっぱり。悪のヒーローじゃねえっすか」
「ばーか言ってんじゃねー。だせぇネーミング付けんじゃねぇよ」
いつもの様に征也と飲んで、クラブに居た恭介たちと合流した。恭介たちはおっぱいが見たいと言い出して、若いやつらを連れて、着飾っておっぱいを揺らした姉ちゃんの店に行った。
恭介たちのギラついた性欲と、征也のクソウゼェ熱意がいつまでも変わらず続くと思っていた。
親父からこの世は無慈悲で溢れていると思うような電話が来たのは2週間後だった。
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