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三田村征也
駅裏の公園が俺らの溜まり場だった。意味もなく、目的もなく、ただ仲間と居ることだけに意味がある。
「蓮ー。お前も集会に顔出せよ」
慎太郎がバイクをふかしながら、声を張り上げる。最近、改造が終わったらしく集会で走る日が楽しみで仕方ないらしい。音楽が流れる様に改造したらしいが、マフラーがうるさくて、周りには何も聞こえない。
「俺は良いよ。俺はバイク好きじゃねぇんだよ」
こんな族に入ってるくせに、大人数でつるむのは好きじゃ無い。人から巻き上げた金で買うバイクも好きじゃない。後ろに乗ってるんで十分だ。
「……すみません。青薔薇の九条さん……ですよね」
「あー? 何だよクソガキ。何の用だよ」
「……すみません。話聞いてもらっても良いですか? 」
まだひょろっとした中坊二人組が頭を下げる。慎太郎と和樹がバイクから降りてきて、2人に詰め寄る。慎太郎と和樹は剃り込みも入って、随分と気合が入っている。中坊からしたら、こんな近場で凄まれたらビビって逃げ出してしまいそうなものを、このガキは俺から目を逸らさない。腹が決まっていると思った。
「あっ? 何だてめぇ」
「慎太郎! うるせぇ。少し黙ってろ」
「で? どしたの? 」
「三田村征也と言います。こいつは倉林礼央って言います。あの……その……ぶ、青薔薇の五十嵐広大……くんが俺たちの学校に居るんですけど、カツアゲとか金が払えないと殴ったりして……だいぶうちの学校のやつがやられています。俺のダチの女も五十嵐に良いように……やられました」
三田村と言う男はまだ背もそこそこ。体なんてひょろひょろだ。隣の倉林ってやつの方が背も高いし、体型も普通。まぁまぁ喧嘩はできそうだ。
「……それで? まさか俺に止めて欲しいとか言いに来たの? 」
「……いえ。それで……俺は五十嵐とタイマンして勝ったら2度とそういう事はやめろと言おうと思ってるんですが、その……五十嵐は俺は青薔薇の人間だと……俺に喧嘩売れば青薔薇の人が出てくると言っています。なので……これは……その俺たちの中学の問題なので……今回、五十嵐とタイマンする事を見逃して貰えませんか? 」
「はぁ? てめぇ良くそんな事俺たちに言いに来たな? 俺たちは……」
「慎太郎! 黙ってろって」
「タイマンって。お前はさ、どっかの人間なの? ここらじゃ族は俺ら青薔薇と雀鬼くらいしか無いけど……」
「……俺はどこにも入っていません。ただ、西中を……少しまとめてるだけっす」
Tシャツに短パン、スニーカーと、染めていない髪の毛。真っ直ぐこっちを見る目が強いこと以外はただの中坊だった。
「ふーん。いいよ別に。中坊の喧嘩に口出すのも大人気ねーし。それに確かに五十嵐って少し生意気で悪目立ちしてるからよ、青薔薇の名前使って好き放題してるって噂も出てるから、口出さねーでやるよ」
「あ、ありがとうございます」
「だけど条件がある。手も口も出さねーけど俺たちがいる前でやれよ。中坊とは言え、青薔薇の人間がよそもんに喧嘩売られんだからよ」
「……分かりました」
「日時決まったら、連絡しろよ」
「……はっはい」
そう言って逃げるように2人は走り去っていった。
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