贖罪の夜

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荒い息遣いが部屋に広がる。広い部屋なのに、靴も脱がずに扉に背を当てて、床に座り込んだままキスを繰り返した。九条さんの手がスカートの中に入り込んでいく。優しくはない指先が……あの日求めていた強い指先が肌に食い込む。お洒落な服を着て来たのに、胸元のボタンをはずす指先が大変そうで、やっぱりTシャツでも良かったかも。なんて考えた。 「んっ……ん……」 強く掴まれるお尻と首筋から胸へと移る唇。 うざったいくらいのボタンを外して、下着をずらされ熱い舌が胸に触れる。キスで濡れた唇が、クチュっと音を立てて、噛むように先端を刺激される。 「あっ。んん……」 「……痛いよね。背中も。ごめん。何もしないって言ったのに……ちょっと盛っちゃった」 乳首を噛まれて、身体がギュッと動いたせいか唇が離れた。荒い息のまま、肩に顔を乗せられると、心臓が重なったみたいだった。 「ごめん。一人で居られなくて……忘れちゃいけないのに……全部忘れたくて……でも誰でも良かった訳じゃない。わんちゃんに……会いたかったんだよ。あの時格好つけてバイバイしたのに……だっせーよね」 覇気のない顔を無理に動かして、少し笑った九条さんは私を抱き上げた。一生入ることのないであろう高級ホテルの広い部屋は、私には不釣り合いだけど、私に必要なのは彼といるベッドだけだった。 「脱がしてもいいの? 俺に全部みせてくれるの? まだ……間に合うよ」 そう言ってベッドに優しく寝かして、私の手のひらにキスをした。王子様のような優しい唇。 「……あなたに……抱かれにきました」 夢を見ているようだった。私はそれに酔いしれて、自分には一生縁のない言葉を吐いた。 「……ありがとう。わんちゃん」 女というものが嫌だった。口では平等だと言いながら、女を武器に生きている人が嫌いだ。だってズルいでしょ? 見た目が良いからって特別にお金を稼げるとか、女だからって優遇されるとか、女だからって弱いものになってしまうとか……体を露出した服なんて、そんなのきっと馬鹿にされたり、変な目で見られたり、女を利用するなんて間違っている。 そう思って生きてきたのに、だけど今私は女に生まれて良かったと思っている。あなたが触れてくれる胸の膨らみも、撫でてくれる髪の毛も、あなたを受け入れる体を持っていて良かったと思っている。唾液まみれのキスに、絡み合う舌。湿った下半身に、敏感な乳房。キス、キス、おっぱい。おっぱい、おっぱい、キス、キス。余韻が消える間もなく、九条さんの舌と指が私を甘やかす。 「……ごめん。わんちゃん……ちょー情けないことにちんこ……勃たなそう。わんちゃんが悪い訳じゃないんだ。ちょっと弱ってて……」 バスローブも脱いで、びっしりとした入れ墨も一通り見なれてきた時、九条さんが自分のモノを触りながら呟いた。 「……わんちゃん……ごめんね。ちゃんとイカせてあげるから。俺の役立たずのちんこじゃ無理だけど……」 そう笑って、九条さんは自分の舌で指先を舐める。糸をひくように舌と指先が唾液をつないで、その指を私の湿った場所にあてる。 指を舐める仕草が色っぽくて、私は九条さんの指を追いかけるように手を取った。九条さんの指先を舐めて、そのまま這いつくばるように、九条さんのモノに舌を這わせた。 「あ……待っ……わんちゃ……しなくて良いよ。そんなこと……俺がしてあげるか……」 汗で髪がまとわりついて、じれったくて指先で横に流す。九条さんのモノを口に含むと、九条さんは体を少し揺らした。九条さんの声が甘く漏れて、私の下半身は湿り気を増していく。 「待っ……真面目なくせに……どんだけエロいことすんの。わんちゃん……勃っちゃうよ……」 少し昂った息と、漏れる声が色っぽくて、身体が高揚していく。早くこの人のものになりたい。早く一つになりたかった。 「……わんちゃん……責任とってくれるんでしょ? 」 九条さんは私の唇を指先で拭って、ゆっくりと抱き起こす。確かめさせるように硬くなったモノに私の手を触れさせる。 「責任って……俺……女の子みたいじゃん」と照れくさそうに笑った。
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