44人が本棚に入れています
本棚に追加
「悪い子はだいたい裏口から逃げるって相場が決まってんの。こわーいお兄さん達見かけたら逃げろって言われてんの? 」
アリアから聞き出した売春の待機場所。ここにドラッグを捌いている奴らがいるらしいと聞き出した。征也が死んだ後、レオと名乗っていたクラは姿を消し、違法ドラッグに未成年の売春、親玉は失ってもこの世に欲がある限り、金は回り女は股を開く。
「ちが……」
俺たちの顔を見るなり、勘のいい女が数人逃げようとしても、入り口も窓もヤクザが待ち構えている。首根っこ捕まえて、まとめてリビングに放り投げた。
「はいはい。もうウリなんか止めて、まともな仕事につきなさいね。ここの管理人はもう君たちの前に出る事はできません」
未成年売春の待機場所に使われている部屋はリビングと寝室だけのマンションの一室。ヤリ部屋のようにベッドが一つあって他は所々、荷物がまとめられている。12畳ほどの部屋で6人くらいは寝泊まりしていそうだ。髪はパサパサに傷んで、肌は荒れ、栄養不足の様に肌は白い。みな似た様な容姿に、露出した服。散らばった菓子やペットボトルのゴミ。勃つものも勃たない程のガキの集まりだ。
「どう言う事だよ! うちら貝原さんにまだ……お、お金も貰ってないし、行くとこもないんだよ」
1人のリーダー格の女が声を上げる。安っぽい香水の香り、派手な爪。似合わない化粧に体だけはしっかりとした女に育っていて、何とも古臭い外国映画でも観ているようなしょっぱさだった。
「金ぇ? 本当に金だけ? ラムネみたいなの飲んで有頂天セックスが忘れられないだけなんじゃないのー? お前すげーあまーい匂いするよ。ヤク特有のイかれた匂い」
髪の毛掴んで、目を覗き込む。ドラッグがまだ体内に残っているせいか、瞳孔が開いている。
分別のつく歳の頃になれば、もう同情もないが、こんな物に染まり堕ちていくガキたちがこんな場所で揃いも揃って暮らしていて、征也がその一端を担っていたと思うと、あいつはもうカタギに戻れる様な脳みそは持っていなかったんだなと思った。
「兄貴。1人逃げ出した女連れ戻してきました」
恭介が1人の女の首根っこ掴んで戻ってきた。征也が居なくなってから、恭介はずいぶんと鼻がきくようになった。あんなにも慕っていた兄貴分を失った今、本音は俺を殺したいくらいだろうに。
「やだ! やだやだやだやだ! 違うの! 違うの! 違うのっっ」
「んだよ。うっせぇな。てめぇもヤク中かよ……」
「違うの。違う……なに……何があったの? ねえ」
「あー? あ? お前……なんだっけ。あー沙羅だっけ? ちっ。何やってんだよ……つーか。何? 何を言ってるのか分からない。お前もヤク食ってんのか? 」
髪も染めていない。服もまとも。少しはマシな女に見えたのに、顔を見ると見覚えのある顔に胸糞が悪くなる。
「何があったの? だって……あなたが来るなんて……なっちゃんに何かあったんでしょ? マナトが……マナトに……」
恭介が沙羅を俺の前に放り出すと、逃げるように体を丸めて沙羅が泣き叫ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!