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 日野の「隠れ研究所」を訪れてから数日間、俺は昔のコネをフルに使って、政府関係と繋がっていた奴らに連絡を取っていた。俺はバイヤーなどが持ち寄ったブツの「鑑定役」が主な仕事だったので、俺自身に政界との深い繋がりがあるわけではない。あくまで、そういった政府の要人たちに裏でブツを回していた奴らを、何人か知っているだけだ。  しかもそれが「何年も前のこと」となれば、当然連絡が付かないどころか、行方知れずになっている奴もいた。恐らくは何かのトラブルを起こし、両足をコンクリで固められ、どこかの港にでも沈められているのかもしれない。また、なんとか生存が確認出来たとしても、以前とは連絡先が違っていて、会うのが容易ではないと思われる者もいた。そんな蜘蛛の糸にすがるようなコネの中から、俺は「こいつなら……」と思われる奴をピックアップした。  そいつももちろん、以前とは連絡先の電話番号なども変わっていたが、俺は知り合いのつてを辿って、なんとかその番号を探り出すことに成功した。まだ俺の腕は、そう錆び付いちゃいないのかもな……。そんなことを思いながら、俺は早速そいつの住むアパートへと行ってみることにした。  最初は橋本と2人でアパートへ行くつもりだったのだが、今回もいつの間にかカオリがついて来ることになっていた。俺自身はOKを出した覚えはないのだが、橋本が「良ければご一緒に」とでも言ったんだろうか? そう思って橋本に聞いてみると、「いえ、私は特に……」という返事が返って来た。つまり今回もカオリは、「気が付いたら、ちゃっかりそこにいた」というわけだ。 「そいつ」も薬物法施行後は、表向き「裏稼業は引退」というなんともややこしい状態だったようだが、その実コッソリと、薬物関連でそれなりの稼ぎはあげていたらしい。ただこいつの場合は仕入れたブツで商売するというよりも、自分で接種する方に重きを置いている可能性は高かったが。
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