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「だから、せっかく来てもらったのに申し訳ないが、今のところわしの方では、これといった手がかりは掴めておらん。だが、その道の専門家たる二人が仲間となれば。これはあながち、そこに『たどり着く』ことも、実現不可能だとは言えないかもな……」
日野が意味ありげにそう呟くと、そこからは話を引き継ぐように、今度は橋本が語り始めた。
「実際のところ現時点では私の方でも、そういったウワサの類しか情報は仕入れられていません。しかし……私はそれこそが、SEXtasyを探す手がかりになるのではないかと考えました」
そう言って橋本は、俺と日野を交互に見渡した。恐らくここからの話が、この「第一回作戦会議」の本丸ということなのだろう。
「日野さんが言ったように、私が仕入れたウワサというのも、自分ではない誰かがSEXtasyを服用した、その結果を伝える『伝聞』ばかりで。自分で服用したことがあるという者に会ったことは、一度もありません。そんなウワサばかりが先行している、都市伝説のような薬物。果たしていつ頃から、そんなウワサが語られ出したのか。私はまずとっかかりとして、そこに目を付けました。
そして調査の結果、あの薬物合法化法案が施行された直後から、SEXtasyのウワサが広まり始めたことがわかりました。法案の施行前には、SEXtasyに関する情報は誰一人として口にしていないのです。法案施行後の混乱状態を考えれば、そんな夢のような薬物のウワサが人々の間に広がっていったのも、当然のことだと言えるでしょう。
しかし、ウワサが広まるのはわかりますが。では、そんな混乱期に、いったい誰がSEXtasyを『開発』したのか? あのカオスに満ちた状況の中で、新しい薬物を精製し開発することは、事実上不可能に近かったことは、日野さんも片山さんも、よくご存じかと思います。それまで流通していた薬物を、なんとか施行後の『合法化』に適用させようと、ありとあらゆる細工や誤魔化しが横行し、とても『新規開発』に力を注げるような状況ではなかった」
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