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そして、あっという間に施行されるに至ったがゆえに、本来は施行前に検討し決めておくべき、規制や制限などの項目がほとんどおざなりにされ。施行されてすぐに、それはもうありとあらゆる問題点が当たり前のように噴出し、それに対する方策の何もかもが、「後追いでその場しのぎの解決策」でしかなく。結果、高価で高品質なものから廉価で怪しい品質のものまでが次々に乱発され、市場は混乱を極めた。
元より、そういった怪しい物品に関するネット販売の規制自体が曖昧なものだったので、そんなタガの外れたマーケットで政府がお墨付きを与えた「怪しいブツ」を販売することに、歯止めなどかけられるはずがなかった。こうしてたちまち世界は、カオスに満ちた「薬物天国」へと化していったのだった。
そんな中、カオリのように「昔ながらの接種方法」をしてる奴というのは、合法化された薬物の中に、あえて「危険性」を見出したい輩だ。合法化「されてしまった」ことで、彼ら、彼女らの中で、法を破るという「禁断の味」が失われてしまった。そういった輩は少なからず存在したため、当然の如く「そのためのマーケット」も生まれるに至った。需要あるところに供給ありだ。
表向きは「懐古セット」などという品名で、昔懐かしい「あのやり方」をもう一度! などの触れ込みと共に、それはごく普通に販売されていた。ご丁寧に、CMのBGMには『あの素晴らしい愛をもう一度』の曲が流れていたりした。それでも懇切丁寧な「接種の手引き」を元に、「合法化されたブツ」を接種するなら問題ないのだが。そこでカオリのような、禁断の味に飢えた者たちのため、「合法化スレスレ」のブツを提供する奴も後を絶たなかった。
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