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20世紀末、1990年代あたりから、メチレンジオキシメタンフェタミン――通称「MDMA」と呼ばれる薬物が、世間に出回り始めた。それは一般的に「エクスタシー」と呼ばれ、若者層を中心に「愛用」されていた。服用すれば、一種の多幸感を得ることで、「ハイになった状態」を味わうことが出来る。MDMAを利用した心理療法の臨床実験も行われたくらいだから、その「効能」は折り紙つきと言えた。
だが、世間に出回っていたエクスタシーは、「純粋なMDMA」であることは滅多になく、「違法な化合物」が混入していることが常識だった。それは当時、「より広く」世間に行き渡らせるために取られた、「配布する側」にとっては当然の選択だったのだろう。その代わり、連続服用することによる「危険度」もアップし、メディアで度々取り上げられ「問題視」されることも少なくなかった。
そして、薬物天国と化した現在の世界で、人々の間でまことしやかに囁かれるようになった、エクスタシーの「上位変換薬物」、通称「SEXtasy」は。取り分け、性的欲求を高め、更に性的満足感も向上させる効果があるというのが、「一般的な情報」だった。これも20世紀末から「合法なもの」として、医師の処方と共に使用・販売されていた「バイアグラ」と似たものに思えるかもしれないが、「SEXtasy」はバイアグラとは似て非なるもの、全く異なるものだという「触れ込み」だった。
バイアグラは性的効能を高めるものであり、いわゆる男性の「勃起不全」に効果があることで知られていて、性的興奮を高める「媚薬的効果」は無いとされていたのに比べ。「SEXtasy」は、内なる性的興奮を呼び覚まし、性的効能を極限まで高める。ようするに、「男女問わず、これまで感じたことのない快感を、味わうことが出来る」ものだと言われていた。
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