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Episode 1
千葉にある一軒のリゾートハウス。七月の陽光が煌めく白い壁沿いに、慌ただしくカメラの機材を運び込む人間がいた。
「橘さーん! 最初にベッドルームからですかね?」
Tシャツにラフな格好をした女性が声をかけると、三脚を肩に担いだ橘は振り返った。
「いや、小田さんから先に洗面所からって聞いてるぞ!」
「了解でーす!」
今日は、有名俳優の来期のカレンダー製作の為にプロ達が集まっていた。照明器具や衣装類、小物など様々なものが所狭しとハウスの中に持ち込まれる。
「小田さん、今回は俺、大人な感じにしたいんですよね」
リビングの革ソファで座りながら優雅にサンドイッチを頬張る男が口を開く。明らかにある多忙な周囲との温度差。
「あー、リィ君の言うことは分かるけどもさ、ファンは萌え袖期待してると思うぞ?」
「もー、30近くにもなってそれは勘弁ですよ」
ハハっと声を上げ、リィと呼ばれた男は立ち上がった。ブラックヘアを短くカットし、これでもかと言うほどの小顔。しなやかそうな身体は見事に鍛えられているのか、シャツの上から分かるほど胸板がしっかりと見られる。
「じゃ、揃ったら始めようか。最初はリアルな感じが欲しいから洗面台で撮ろう」
小田はそう言いながらベストのポケットにある煙草を出した。白髪混じりの毛がボサボサでいかにも愛煙家の姿がここに見える。
「小田さん、禁煙ですよ!」
衣装の管理していたおさげ姿の女性が声を上げる。
「いいじゃない、中嶋さんも固いなあ。仕事前の一服くらい許してよ」
「だめだよ、小田さん。智沙子ちゃんは喘息持ちなんだからさ」
リィは立ち上がってそっと小田の手から煙草を取りあげた。
「なんだよ、二人ともそういう関係か?」
「違いますっ!」
全否定する智沙子を笑うリィ。
しかし真逆にもリィは、「そんなとこ」と流したのだった。
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