節約

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「また点けっぱなし!」  私は舌打ちをして階段の電気を消した。夫も子供たちもすでに眠っている。 犯人を追求するのは朝まで持ち越し。だが聞いたところで誰も覚えていないだろうし、しまいには「最後に階段を昇り降りしたのが誰だったか」を巡ってやる気のない攻防が繰り広げられるのを見せられるだけに決まっている。どっちだっておかしくないし問題はそこではないのだから、「ごめん、気をつける」と素直に言うだけにしておけばいいものを。どうでもいいと思っているくせに責任を被るのが嫌だからと言って、くだらない言い争いを見せられるのはこっちの方こそうんざりだ。  かくして真相は闇の中。誰もが「自分ではない(かもしれない)」という顔をして、なんの教訓も得られずに、次にはまた電気を点けっぱなしにすることになる。階段だけではない。廊下、トイレ、洗面所、台所、玄関……「点けた電気は消さない」という固い信念でもあるのかと疑いたくなるほど、我が家ではいつもどこかの電気が無駄に光を放っている。
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