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──あの顔は……お隣の嵩祢だった。
小走りに石段を駆け降りながら、自分の記憶に間違いが無いのか胸中で何度も反芻した。
淫靡に妖しく上気してはいたが、あれは間違い無く嵩祢の顔だった──
呼吸も忘れる勢いで足を動かした。
石段を降り切った処でひと息着き、ふと後方を仰ぎ見てドキリとした。
何時の間にか、巨大な月が上がっていた……
悠然と聳える鳥居依りも、高度を上げた恐ろしい化け物のような満月に、僕はまるで子鼠のように怯えた──
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