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明るく応対に出た母とその女性の会話に耳を欹てた僕は、随分と長い間買い手が付かずで、空き家だった隣の戸建ての入居者だと知った。
「家も四人家族なんですよ──」
初対面の挨拶みたいなのに続き自己紹介が始まり、我関せずと二階の自室へ引き上げようとした時、母は突然僕の名前を口にし、玄関口へ来いと呼んだ。
内心の面倒臭さを隠し、会釈を向けた僕は、それで自分の役目は果たしただろうと、自室への階段を駆け上がった。
「全くもう……照れてるんだか何だか……愛想無しで──」
母が済みませんと取り繕うと、
「年頃なんでしょうね。家の下の子も一緒です」
喩え話を混じえた後、大袈裟に笑い合う声が二階の部屋まで届いて来た。
『同い年くらいの子がいるんだな……』
年頃の近い子が隣りに越して来たと知り、どんな子だろう? 仲良くなれるだろうか? と、期待で僕の心は微かに膨らんだ。
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