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その日の夕食後、お隣さんの話題に花が咲いたのは言うまでも無く、
「家と同じ姉弟の四人家族なんだ? へぇ~どんな子なんだろう?」
饒舌な姉がダイニングテーブルに身を乗り出し、挨拶に持って来たと言う菓子を片手に、対応に出た母の顔を覗き込み、話を受け継いだ母親が会話を引き継いだ。
「上のお嬢さんは美月と同い年、下の坊ちゃんは真奈人の一学年下になるらしいわよ」
隣り町の私立高校へ転入する話を併せて聞いた姉は、途端に落胆をため息に乗せた。
徒歩圏の公立では無く、隣り町の私立を選択とは……家とは違って裕福なんだなと、そんな事を思いながら、チラと見たあの母親は割と美人だったな──風に思い出していた処へ、
「そりゃ金持ちだな。……上品そうな美人だったんだろう?」
父が話の矛先をそこへ変え、
「お嬢さんもおしとやかな美人なんだろうな──ガサツな家のと違って」
余計な一言で姉の反感を買ってしまい、窮地に追い込まれた父が、『女は顔じゃ無い、俺は顔で選んだ事などない』云々、無駄な足搔きを見せた事で、母の機嫌まで損ねた。
僕にとってはどうでも良い父の弁明を聞きつつ、『とうとうあの家に人が入るのか──』と、小さな残念を胸に広げていた。
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