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役目を終えた人工衛星は大気圏で燃え尽きるが、たまに燃えきらずに破片が地上に落下することがある。
その衛星の破片が、日本のとある県の、とある地区に落下した。
日本のマスコミは色めきたち、早速落ちた場所へ向かった。
ところが落ちた場所は幸か不幸か空き家だった。被害はなかったが、これではニュースのネタにしては弱いなとレポーターはため息をついた。
レポーター達は一応、垣根の前の歩道を挟んだ向かいに建つ家、そこで居住していたいわばお向かいさんの住人にインタビューを敢行した。
お向かいの住人、会沢さんはまくしたてた。
「いやもう、本当にすごいことですよねえ。当たったら大変だったけど、でももうギリギリでしたからねえ。衛星が自分に当たる確率は二十一兆分の一って言うじゃない。そんな衛星が真向いの家に落ちたんですから、あたし宝くじ買いますよ。一等は無理でも、前後賞くらいは当たるかもしれないでしょ。なんせウチの家の『手前』に落ちたんだから」
前後賞とは一等の当選番号のひとつ違いの番号のことである。それを狙って会沢さんは早速宝くじを買いに行った。
景気よく五百枚買った。
そして当選発表の日。会沢さんは自分の買った宝くじと当選番号とをにらめっこしていた。
大外れが450枚、末等が48枚、5等が1枚。そして、最後の1枚は……彼女は固唾を飲んで端からゆっくり眺める。
「当選番号は31組243544…あたしの宝くじは…31組、2、4、3、5…4……2!」
会沢さんは宝くじをひっちゃぶいて叫んだ。
「ぐああっ、二つ違いかあぁぁ~!」
会沢さんは惜しくも当選ならずだった。
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「24354…3。おっ、当たった。前後賞が当たったぞ。やった、一千万だ!」
汚れた新聞を片手に、イシダさんは喜んだ。ゴミ捨て場でたまたま拾った宝くじが当選したのである。
「これで今の生活とおさらばできる……こらっネズミども、寄ってくるんじゃないっ」
前後賞は、破片が落ちた空き家と会沢家のちょうど中間の歩道に位置するマンホールの下、そこの下水道にて居住していたイシダさんの手に授かったのである。
(了)
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