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結局飲み会はだらだら続き、私もいつの間にか席を囲んでいた。
飲んでいるのは、私はコーヒーだったが、ずっと無視して本を読んでいる訳にもいかない。
尾崎はいい人だった。
旦那をしっかりと持ち上げ、仕事の内容も誉める。それでいて、私にも気を使い、旦那の話にも上手く合わせる。
いい部下に囲まれているんだな、と思った。
仕事の話は旦那は家では殆どしない。
だから仕事先での旦那の活躍に素直に嬉しくなった。
毎日不機嫌になる事もなく仕事に行けているのは、きっと部下に恵まれたんだな、とホッとした。
旦那が千鳥足でトイレに立った時だった。
「少し飲ませ過ぎちゃったかな?すいません、奥さん、嬉しくて、つい。僕もうそろそろお暇しますね。」
尾崎の気遣いが有り難かった。流石に私からは言えない。
「ごめんなさい。主人お酒弱くて、でも安心しました。尾崎さんの様な方が彼の部下になってくれて支えて下さっているんですね。これからもどうか主人を宜しくお願いします。」
私は素直に感謝をした。
「支えられているのは僕達ですよ。でも一番に支えられていらっしゃるのは奥さんなんでしょうね。主任、デスクにも奥さんの写真飾ってますよ、ラブラブなんですね。」
うわぁ、恥ずかしい、、いくら新婚とはいえ、妻の写真を飾ってるなんて、、
少し赤面した。
尾崎はそれを見て少し頬笑む。
そこに旦那が帰ってきた。
「主任!僕もう帰りますね。電車なくなっちゃうし、今日は突然なのに本当に有り難うございました。また、ご一緒させて下さい!」
ほぼ酩酊、ご機嫌状態である旦那は
「おう、またいつでも飲もうや!」
と大きな声で言ったかと思うと、そのまま奥のソファーに突っ伏してしまった、、
撃沈。
ソファーに倒れこんだ旦那を私と尾崎は苦笑いして見つめる。お開きはやっぱり大正解だったみたいだ。
けど、もう旦那に部下を玄関まで送り届ける力は残ってない様だ。
「ほんと、すいません、、」
私は撃沈してしまった旦那の仕様を謝った。
「いえ、こちらがここまで飲ませ過ぎちゃったんです。こちらこそ本当に申し訳ないです。」
尾崎も結構酒が入っているはずなのに全く顔には出ていない。
玄関まで来て靴を履きながら、尾崎が言った、
「今日は本当に有り難うございました。」
靴を履いて私に向き合ってお辞儀をした。
「いえ、こちらこそ。楽しかったです。」
私は笑顔で応えた。
尾崎が玄関ノブに手をかけて言った。
「また、来ます。」
「雪美さんに会いに。」
ガチャ、と扉が開き冷たい風が入ってくると共に尾崎はそのまま出で行った。
ん?あれ?
「雪美さんに会いに」??
聞き間違えかな?
うん。違うよね。そんな事はない。絶対にない。あってはならない。
私は暫く動かない玄関の扉を見つめながら呆けていた。
そんな事より!今は潰れた旦那だ!
後片付けもしなくっちゃ!
うわぁ、忙しいっ!
私はその後のバタバタで先程まで呆けてた内容が吹き飛んだ。
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