家で呑むなら早めに言って下さい!

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次の週末の夜、昼から来た旦那のラインに応え、私は今回はちゃんと買い物をしてきた。 昼のラインはこうだ。 「こないだ尾崎が家に来ただろ?そしたら今度は竹原が、ずるい!僕も行きたいって事になってさ、流石に尾崎を呼んだ手前、ことわれなくてさ、明日は仕事休みだからさ、今日の晩、家飲みしていいかな?」 ええーーっ、こないだに続きまた?? でも確かに彼の部下は一人ではない。 一人だけ招いて他をシャットダウンするのはやっぱり良くないよね、、言いたい事は分かるけど、、あんまり家には上げたくない、というのが本音だ。 今回でなるべく最後にして貰おう、また相談しよう。 と思いながら許可した。 「助かる。尾崎があんまり触れ回るからさ、、俺も参ったよ。」 旦那はそんなに人気者なのか? まぁ有難いけど、お酒が飲めない私としては全く楽しくないんだけど、、やっぱり気も使うし、、 お客様スリッパまだあったかな? お酒は、、うん。ちゃんとある。 今度は飲みすぎない様にちゃんとチェックしなくっちゃ! 私は買い物から早めに帰宅してお客様受け入れの準備をした。 人数が増えるのなら、ダイニングテーブルよりリビングの方がいいか、、 夕方、チャイムが鳴る。 私は笑顔で旦那とお客を引き入れる。 お客様は、、えっと、こないだの尾崎君、と、こっちが竹原君かな?すこしマッチョなスポーツ青年だった。 「あぁ、こいつが竹原、こいつも以前酔い潰れた俺を連れて帰って来てくれた相棒。」 旦那は靴を脱ぎ部屋を進む。 覚えてる訳がない。私は旦那の上着と鞄を預かると、二人のお客を奥のリビングに通した。 「ここが主任と奥さんの愛の巣っすか!」 竹原と名乗るその男はスポーツマンらしく爽やかに、でも内容はからかった様に口にする。 「そうだよ、愛の巣だよっ!」 旦那もからかわかわれ慣れているのか、普通に受け答えをする。 何という会話だ。 何て返していいか分からない。 「どうぞ、ようこそ。大したものはありませんけど、こゆっくりして行って下さいね。」 私は旦那の荷物を片付け、玄関の男物の靴を整える。こんなに男物の靴で玄関が埋まった事はない。 「尾崎が言ってた通り、ほんと可愛い奥さんっすね!」 竹原はズバズバと思った事を口に出すタイプの様だ。 「こらっ!失礼だろ!」 と尾崎が竹原のみぞおちを小突く。 「すいません、こいつ能筋なんで、、」 尾崎が申し訳なさそうに頭を下げる。 「いいんだよ!俺の奥さんは世界一可愛いのは事実なんだか!でも、やんねぇぞ!」 旦那もついでに調子に乗っている。 男三人リビングテーブルを囲み宴が始まる。 人数が増えた分私の仕事も増える。 料理を運んだり、氷とお水を持って行ったり、テーブルの上の空き缶や空き皿を片付ける。 私が忙しなく動くのを見て、尾崎が無言で手伝ってくれた。 「あ、有り難う。いいのよ、座ってくれてても。」 私はキッチンで洗い物をしながら言った。 「いいんですよ、この位させて下さい。お邪魔してるのはこちらなんですから。」 空き缶を潰しながら、リサイクルのゴミ箱へ入れて行く。 竹原も尾崎同様かなりお酒は強いと見える。 滞在してそんなに時間も経ってないのに、凄い空き缶の量だ。 洗い物をしている私を見ながら尾崎が、 「また会えたね、雪美ちゃん。」 と言った。 聞き間違えではない。私はビクッとして作業する為、屈んでいる尾崎を見た。 今まで聞いた事もない様な低い声だ。 私は少し恐怖を感じた。 でも、これもちょっとした悪ふざけなのかも知れない。 「ど、どういう意味かな?酔った?」 なるべく努めて笑ってみせた。 冗談ではないのは次の瞬間に分かった。 尾崎が私の下半身に抱きついて来たのだ! 咄嗟の事で私は「ヒッ!」と軽い悲鳴を上げた。 しかしテレビでスポーツ観戦をし大いに盛り上がっているリビングにはそれは聞こえなかった様だ。 私は濡れたままの手で尾崎を払いのけようとした。 「黙って!」 尾崎は更に強く下半身を抱き締める。 そこで旦那が声をかけてきた。 「んー?どうかしたか雪美?」 ビール缶を口につけたまま旦那がキッチンにいる私に声をかける。 助けて! と言いそうになった時、尾崎がすっと私の横に立って、 「すいません、主任。僕が潰してる空き缶が洗い物をしてる奥さんの所に転がっちゃって、、、すいません、奥さん、驚きましたよね。」 と流れる様に嘘をついた。 「おー、気を付けろよ。うちの奥さん傷つけたら、いくら部下でも許さねーぞー。」 旦那はまた竹原とのスポーツ観戦に戻る。 やだ!このままじゃ危ない! 私の防衛本能が働いた。 キッチンから出なきゃ! 私は急いで手を拭くと、その場を離れようとした。 すると隣で立っていた尾崎が丁度リビングから死角になるコンロのスペースに私を追いやり、無理矢理キスをした。 「このまま黙ってる方が皆の為になると思うんだけどなぁ、ねぇ雪ちゃん?」 尾崎は今まで見た事もない様な、冷たい視線で半ば、脅してくる。 どうしよう、、、旦那は気がついてない。今私が何か言ったとこで尾崎がとぼければ意味がない! 私は焦った。
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