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スマホをタップすれば君の笑顔が溢れ出す。
これは去年の冬に撮ったもの。
次は今年の春。
輝ける思い出の瞬間は切り取られて四角い画面にぎっしり並んでる。
でも所詮は君と過ごした膨大な時間という海に浮かぶ泡を、掬ったものでしかない。
全身に刻み付けたいのに、形を変えて指の間を擦り抜けていく。
生まれるのと同じくらい儚く。
命のように上昇して消えていく。
始めから存在しないと、錯覚する。
手を伸ばしても掴めない。
抱き締めたいのに。
君の姿を過去の写真に求めても、温もりと魂は戻らない。
それでも俺は──
「くそったれ!! 」
形を変えて湧いてくる新たな泡。
その甘い記憶が生み出す泡はブクブク膨れ、やがて脳内で弾けるんだ。
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