兄との思い出(弟視点)一

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 あくる日のこと 「明日、今日はちょっとした旅に行かない?」と日が昇り始めて少し時間が経った時に兄は突然そう言った。 「雪夜は良いって言ってた?」雪夜は僕と兄の家族であり、親でもある。彼は心配性なのでいつも報連相を怠るなと口酸っぱく言っていた。 「うん、良いって言ってた。椿さんも一緒にっていう条件付きだけど」椿さんか、と声に出さずに口の中で呟く。 彼女を例えるなら柔らかい春の陽射しのような方だ。話すとポカポカとして暖かい気持ちになり、兄とはまた違う包容力がある。 「おはよう〜明日君」ひょっこりと兄の後ろから頭を出して右手をひらひらさせながら彼女はそう言った。 「おはよう、椿さん」 「どう?俺の弟可愛いでしょう?」普段兄は『僕』という一人称を僕と話す時に使っているから『俺』という一人称を兄が使うのが印象的だった。 「うん〜可愛いよ、明日君は」と彼女はすり足で僕の近くに来てそっと撫で撫でした。 撫で撫でされるのが嫌いではなかったけれどなんだか恥ずかしかったので彼女の視線からそっと顔を逸らす。 そして兄に彼女を僕の近くから離してくれと視線を送る。 兄は僕の視線に気がつくと「照れてる明日可愛いんだけど」と兄は悶絶してたので僕は兄に助けて貰おうとするのを諦めた。
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