兄との思い出(弟視点)一

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 数時間後  バスや電車を何本か乗り継いで恐らく目的地であろう場所に到着した。 青ガラスのように透き通った青空に太陽に向かって真っ直ぐと伸びている黄色の花が美しい風景が視界に映る。 「向日葵畑だよ〜」彼女が向日葵畑の前で思い切り手を広げてふふふと嬉しそうに笑った。 「明日に見せたかったんだ」と兄もまた嬉しそうに笑った。 自分じゃ絶対こんな考え思い浮かばないなと思った。 「ありがとう」うまれてきてから一度も美しい風景というのを見たことがなかった僕は長い間記憶に焼き付けるように美しい風景を眺めた。  しばらくしてから彼女が近くのお店でラムネ瓶を買ってきた。 「明日君、未来、じゃーん。これが俗に言うラムネと呼ばれるもの〜」 「俺、まだ飲んだこと無いんだよね」 「じゃ、これを機に飲んでみてよ〜凄い美味しいから〜」 彼女からまだ冷たいラムネ瓶を渡された。 開け方を彼女に兄と二人で教えて貰い言われた通りに行う。 不思議なことに同じ手順を踏まえているのに兄のラムネの炭酸は溢れ出てこず対照的に僕の炭酸は溢れ出てきた。 「明日君、これで瓶の周り拭きな〜」と白いハンカチを彼女から受け取り指示されたように拭く。 「やっぱ兄弟でも器用不器用って変わってくるんだね〜」 「人には向き不向きがあるように俺たちも向き不向きがあるんだな多分」としみじみとした感じで兄はそう呟いた。
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