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 そうだ、あの部屋の様子を片っ端から写真にとって、お札なんて無かったと突きつけてやろう。僕が捨てたとか言うなら、じゃあどんなお札を用意していたか言ってみろと返せば良い。お札を置いた証拠を反対に出してみろ、なんなら今までの悪行だって全部バラしてやる。それで、あんなくそみたいな部活辞めてやるんだ。……部長には、悪いけど。 『八雲がいつも迷惑かけて本当にごめん。大学にも迷惑行為としていくつか話してるんだけど、今回の黒塚くんのことも伝えておくね。今から迎えに行くから、もう少しだけ待ってくれるかな』  ポケットの中でスマホが震え、部長からの返事を確認する。優しくて少し気の弱い、砂原部長もここまで言っているのだから、今までも相当やらかしているのだろう。迎えに来てくれるということだったので、安心して僕は立ち上がりあの部屋を探す。ほどなくしてがれきの奥に「…室C」とだけかろうじて読める室内表札を見つけた。  帰り道を忘れないかが心配だったが、がれきの中に黄色の蛍光マーカーのような色がひかれているのが見えたので、あまり迷わずたどり着くことができた。解体工事のためのマーキングかなにかだったのだろうか。けれど、それにしてはあまり目立たない位置にあったりするので、それも霊障かなにかが関係しているのだろうか。  細身な男一人がようやく通れるがれきの隙間を見つけ、なんとかしてくぐり抜ける。あのムチムチの筋肉が自慢の副部長には到底、通れそうにもないそこを写真に収めてから、いよいよ手術室の扉に手をかける。普段はビビりの僕だが、皮肉なことに今は生きた人間の方がよっぽど恐ろしいと、霊に怯える気持ちなんて微塵も残ってはいなかった。 「……ようやく、会えたね」  取っ手に手をかけ、開こうとした瞬間はっきりと聞こえた、人の声。予想だにしていなかった雑音に、思わず手を引っ込めて息をのむ。元より初めは肝試しのつもりで、ここが「出る」と噂の病院だとも知ってはいたが、背中に急に冷や汗が伝う。 「……こっちに……おいで」
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