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その後、あやめと少女は少し休むとその場を去り、胡桃は星周によって出席者に紹介されることになった。
散々挨拶をして晩餐会もお開きとなり、客もあらかた退出した頃になって、星周とバルコニーに出た。星空の下、「胡桃さん」とあらたまった調子で名を口にされる。
「俺と結婚して頂けますか」
「ここまでされては、拒否は難しいでしょう。家に帰って僕から胡桃によく話しておきます……」
敦と胡桃の混じったような口調で答えてから、ハッと胡桃は口元をおさえる。
(いまの求婚は、胡桃に対して言っている……!?)
星周はほんのりと滲むような笑みを浮かべた。
「最初から知っていました。あなたは胡桃さん御本人ですよね」
「……星周さん?」
恐る恐る、敦ではなく胡桃としてその名を口にする。星周は微笑んだまま頷き、甘い声で告げた。
「早めに打ち明けようとは思っていたんです。しかし、あなたがご自分で外堀を埋めている姿を見ていたらあまりに可愛らしくて、どうしても途中で明かすことができなくて……」
「ひどいことを言っていますが?」
「あなたを大切にしたいという気持ちは本当です」
「認めれば良いというものでは……」
星周の笑顔を見ていると、恨み言も続かない。
肩の荷が下りたのは胡桃も同じ。こみあげてきた笑いとともに、胡桃はそっと星周の手に自分の手を重ねて、求婚に対しての返事を口にした。
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