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「莉良とママは趣味がよく似ているから、こういうの好きよね」
完全な同意なんてしなくても、ママはいつも自分のいいように解釈する。私の顔が引き攣っていることなんて気づきもしない。
ママはかわいいものが大好きだ。私はかわいすぎるものがあまり好きじゃない。好きじゃないというか、嫌いになってしまったというほうが正しいのかもしれない。
だけどこの家は、かわいいもので溢れかえっている。それは私の部屋だって例外じゃなくて。白とパステルカラーのピンクで統一された部屋には、ぬいぐるみがたくさんいる。カーテンはレースでヒラヒラしているし、クッションだってハート型。ケーキを口に無理やり突っ込まれているみたいな部屋で、私は毎日を過ごしている。
部屋だけなら我慢もできるけど、私の服や髪型もママが全部決めてしまうから、鏡を見たときに本当の自分との違いに戸惑ってしまう。まるでストロベリードーナツみたいに飾られた私の中身は、全然甘くないんだから。
最近はママに私の好きなものを決めつけられるたび、お腹の底のほうで嫌な感情が蠢くのを感じる。うねったり、刺さりそうなほど尖ったり、まるで昔ママが捨ててしまった磁性流体のオブジェみたいだと思う。
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