26人が本棚に入れています
本棚に追加
走り出したまさきさんの車を見送ってから、私は科学館の真ん中に浮かぶ巨大な銀色の球体を見上げた。首が痛くなるくらい大きい球体の上半分に陽の光があたって、眩しく光っている。
あそこにプラネタリウムがあるんだよね。中がどうなっているのか、全然想像ができないけど、見ているだけでワクワクした気持ちになってくる。
まずは、フェネックとハトポに会わなきゃ。いつも話しているとはいえ、実際会うとなると緊張する。私、ちゃんと話せるかな。
ディスコードでも授業でも私はカメラオンにしたことがないから、ふたりは私の顔を知らないし、こんな奴だったのかと思われちゃうかもしれない。そうだったらどうしよう。
考えていたら、急にお腹が痛いような気がして帰りたくなってきてしまった。
でも、まさきさんにも公晴くんにも応援してもらったんだから、ここで帰るなんてできないし、ハトポとフェネックにもがっかりされちゃうよね。
不安なまま球体の下に向かって歩いていたら、見知った顔が目に入った。ハトポだ。
思っていたよりもハトポは背が大きい。隣に立っているフェネックはスマホを見ていて顔が見えないけど、本物のフェネックの写真が印刷されたTシャツを着ているから間違いないだろう。わかりやすい服で行くと言っていたから。
近寄ろうとしたとき、ハトポが遠慮がちに手を振ってきた。
え、なんで私だってわかったんだろう。
手を振り返したら、フェネックも顔を上げて早く来いというように手招きした。
私が駆け寄ると、ふたりともちょっと照れくさそうに笑った。
「俺、ハトポだよ。ライ……だよね」
「うん。遅くなってごめん。なんで、私がライだってわかったの?」
「フェネックが、多分あれじゃないかっていうから、手を振ってみたんだ」
な、というようにハトポがフェネックのほうへ顔を向けた。
「ライっぽかったから、そうかなと思って言ってみたら、ハトポがもう手を振ってた」
ライっぽく見えたんだ。嬉しくて顔がにやけてしまいそうになる。
「あっちで出席の確認しているから、先に行ってきな。もう俺とハトポは済ませたから、ここで待ってる」
「ありがとう。行ってくる」
最初のコメントを投稿しよう!