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 科学館の中に入り、理工館二階にある不思議のひろばに向かった。  遊び感覚で科学の不思議を楽しめる展示を三人で見て回っているうちに、最初はなんとなくぎこちなかった雰囲気が消え、いつの間にかディスコードで話しているときと変わらなくなっていた。  ハトポはくだらない冗談ばかり言っているし、フェネックはそんなハトポをからかってみたり、ボケてみたり。私はというと、つい知っている知識を話したくなってしまうんだけど、ふたりとも鬱陶しがらずにちゃんと聞いてくれる。  次はどこを見るかと話していたら、ハトポがウッディ・プレイランドと書かれたところで足を止めた。  木のおもちゃやパズルがたくさん置いてあるらしく、パズルマニアのハトポは気になっていたらしい。乳幼児向けなのかと思うと、そういうわけでもないみたいで、大人でも楽しめるパズルもあるんだって。  しばらくここで遊ぶといういつもどおりマイペースなハトポを残し、私とフェネックは人口竜巻を発生させる実験ショーを見るために三階へ向かった。 「もう人がいっぱいだね」  ショーがちょうど始まったところのようで、音楽が鳴り始め、2フロア吹き抜けになった装置の床部分に紫やピンクのライトが当たっている。装置の周りにはもう人だかりができてしまっていて、近づくのは難しそうだ。 「四階から見るか」  エレベーターに乗ったフェネックの後ろに続きながら、装置をのぞき込んでいると、下のほうにもやもやした霧が発生しているのが見えた。 「魔法陣から魔物を召喚するときみたいに見えるのは、司会のコスチュームが魔法使いだからか? なんで科学館のショーに魔法使いを選んだんだろうな」  コンセプトに疑問があるのか、ぶつぶつフェネックは呟いている。 「私も小さいころは、魔法みたいに感じていたかも。高度な化学になればなるほど、説明されても理解するのは困難だよね。アーサー・C・クラークも『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない』と言っていたくらいだし」 「誰それ」 「SF作家の三大巨匠。2001年宇宙の旅を書いた人」  全然わからないというように、フェネックは肩をすくめた。 「知識王って呼ぶわ。クイズに正解できないと生死にかかわるときは、俺は魔法陣からライを召喚することにする」 「それでパズルを解かないと死ぬときは、ハトポを召喚すると」 「そうしよう。でも、フリースクール内って、結構マニアックな奴が多いよな。……って、竜巻すげえな」
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