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一週間前に会ったときよりも、ママはずっと疲れているように見えた。
ママも悩んでいたの? 私のことを、ちゃんと考えてくれた?
「ここは莉良の家でもあるんだから、いつ帰ってきてもいいはずだよ」
「……公晴が連れて行ったくせに」
「姉さんが出て行けと言ったからだけどね」
すでに険悪な雰囲気が漂い始めていて、ますます緊張が高まってしまう。
「莉良、話って何なの?」
ママがイライラした声を私に向けた。
「話の前に教えて欲しいの。ママはどうして一度も連絡をくれなかったの」
ママは答えない。
「もう、私のことなんていらないと思った?」
違うと言ってくれたらいいのに、ママは私と目を合わせようとしない。涙が滲みそうになって鼻の奥がツンとするのを、私は唇を噛みしめてやり過ごした。
「私ね、まさきさんに会ったの」
目をそらしていたママが、パッとこっちに視線を向けた。
公晴くんも、私が他人であるはずのまさきさんの話をすると思っていなかったのか、目を見開いて私を見ている。
「まさきって、まさか……」
「ママのほうがよく知っているでしょ。隠していた私のお父さんだよね」
ママの眉間に深く皺が刻まれていく。
「ごめんね、公晴くん。私、公晴くんとまさきさんが話しているのを聞いちゃったの」
「そうだったのか。気づかなかったな……。まさきさんに莉良が聞いたことは言った?」
「ううん。まだ言っていないの」
「公晴! どういうことなのよ!」
ママが目を吊り上げて、公晴くんに掴みかかろうとした。
「姉さん、暴力はやめて欲しいな。この前痛かったんだからね」
公晴くんは相変わらず冷静に言いながら身体を仰け反らせ、ママの手を押し返すように払いのけた。
「僕たちは姉さんと話がしたいんだ。取っ組み合いじゃない」
「なんでまさきに莉良を会わせたの。説明しなさいよ!」
公晴くんの言葉は火に油を注いでいるだけのようで、ママの顔は般若の面みたいになってしまっている。
「わざと合わせたわけじゃないよ。僕は今、まさきさんのマンションの部屋を借りて住んでいるんだ。まさきさんが長期の転勤で家を空けていたからね。莉良を連れて行った日、偶然まさきさんが帰ってきちゃったんだ」
「そんな嘘、信じられるわけがないじゃない! だいたいどうして、あなたがまさきと繋がっているわけ。私は縁を切ったのに」
ママはヒステリックに金切り声をあげる。
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