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「それは僕の勝手だと思うな。僕の交友関係にまで口だしされるのは好きじゃないって、昔も言ったはずだけど。まさきさんと莉良が会ったのは偶然だけど、一緒に住むように仕向けたことは否定しないよ。姉さんが親としての責任を放棄して、莉良を家から追い出したんだ。もうひとりの親であるまさきさんが莉良に会うことは許されるはずだと思ってね。まあ、まさきさんは真面目だから、姉さんとの約束を守ろうとしていたけど」 「あなたって人は……」  怒りの限界値を超えてしまったのか、真っ赤な顔をしたママがワナワナと震えている。 「この一週間、三人で暮らしていたんだ。まさか莉良がまさきさんのことを親だと気づいているとは知らなかったけど、僕らはなかなかうまくやっていたと思うよ。少なくとも姉さんよりはね」 「たがたが一週間で何がわかるのよ。あんな人に会わせるなんて、莉良までおかしくなったらどうしてくれるつもりなの」  公晴くんが、深いため息を吐いた。 「まさきさんも莉良もおかしくない。おかしいのは、自分がどれだけ人を傷つけることを言っているのかもわからない姉さんのほうだ。傷つけられたことはいつまでも忘れないで恨んでいるくせに、姉さんは相手を傷つけることに無関心すぎる」  まさきさんや私が侮辱されるたびに、公晴くんは苦しそうに眉を寄せる。公晴くんの気持ちはわかる。私も、大事な人を悪く言われるのは辛いから。 「ママ」  ママは呼びかけた私に、血走った目を向けた。 「なに!」 「私、まさきさんのこと好きなの。だから、あんな人だなんて言わないで。まさきさんといると、私は自分らしくいられる。まさきさんは、私をかっこいいって言ってくれた。ママは今の私を見てどう思う。かっこいいって思ってくれる?」 「バカな質問をしないでちょうだい。思うわけがないでしょ。あなたはまさきなんかといるから、変な影響を受けて、そんな男みたいな格好をするようになっちゃうのよ。恥ずかしくて、娘だって言えないわ」  ママが私を理解してくれるはずがないとわかっていたはずだったのに、恥ずかしいと聞いて、胸がギュッと締め付けられるように苦しくなった。 「髪を切りたいと言ったのも、こういう服が着たかったのも私。まさきさんでも公晴くんでもなくて私なの。ママは私を恥ずかしいと思うんだね。いつもそう。ママはいっつも私を否定する。私ずっと自分を抑えていた。ママに嫌われたくなかったから。でも、もうやめる。ママの目を気にせずに、私らしく生きたい。これが私なの。ママが嫌っても、許せなくても、恥ずかしいと思っても、これが本当の私なの」  泣いちゃダメだと思うのに、涙が滲んできてしまう。私は鼻を啜ってから、上を向いて長い息を吐いた。
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