3話

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「なぜか、簡単な話俺は仕事の打ち合わせ……という名の接待をしてるかな。 まぁ俺もここでチリと会うと思わなかったけど、で助けて欲しいほど何があった?」 「何でもな……」 「ん?」 「何でもないです。あの、すいません変な独り言呟いてしまって、大丈夫ですので」 「ほんとに?」 「ええ、酒で少々気が動転してたようなので、もう落ち着いたので大丈夫です」 それでは失礼しますと、心の中はドキドキと脈を打つほど緊張が渦巻くがチリだったが、必死に抑えて素っ気なく東堂の横を通り過ぎ、トイレから出ていく。 返事は聞きたくなかったチリは急いで扉を閉め、東藤を直ぐに遮断する。 あのまま近くにいたらほだされて弱音を吐いて、そして彼に助けを求めてしまうと思ったからだ。 もうこれ以上は深みにハマるのが恐かった。あの時の盲目な彼女、栗原のように自分だけは特別だと勘違いしてしまう気がした。 独占欲の塊になる自分、理性が警告を出すほどに更に強固になってきているとチリは気づいている。 そんな事にはなりたくない、あの人の隣を歩けるだけで俺は 「駄目だ、落ち着け自分。駄目、駄目」 歩き出すチリ、心を落ち着かせようと必死に言葉を繰り返し唱え、今でも扉を開けてあの人に会いたいと思う反面、自身でどうにかしないという矛盾が葛藤を続けた。 「あの、大丈夫?えっとチリちゃん」 「はぁ?」 「えっ」 落ち着かせることに夢中だったチリは間をさすように突然名前を呼ばれ肩を叩かれたことで不機嫌に嫌々振り向くとそこには悩みの種の一つ、男がいた。 チリの普段の声色。店員としか出会った事がない男にとってのいつもとは違うチリの、ガラが悪く低い声に男は手をあげて驚きを隠せなかった。 まずい 「ちょっとまだ気分が悪くて。」 「ああ、えっと大丈夫、随分長いこと帰ってこないから心配で来たんだけど」 「そうですか。ありがとうございます。先ほどより元気になったので、席に戻りましょう」 「本当に大丈夫?まだ具合悪いなら送って行くよ。」 「大丈夫ですので戻りましょう。」 心配したという男は舌なめずりをするかのようにチリをじっくりと観察する。 その様子に二人の空間はまずいと察したチリはさっさと部屋に戻ろうと先に歩こうとしたが、それは叶わず男に腕を引っ張られた。 心の中で悪態をつきながらチリは素知らぬ表情は崩さず、男の方を向く。
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