3話

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「あの、いいですから」 「でも、気分がすぐれないんだろう。」 「平気ですからあの早く戻りましょう。みなさんが待ってますので」 「チリちゃん」 「ほんとにやめてください。俺はもどります」 痛いし、しつこい過ぎる 名前呼び、さらに強く腕を握る男は一切引き下がる気はないのかそこから頑なに一歩も動こうとしなかった。 イライラが溜まるばかりでチリは作っている顔がそうそうに怒りで崩れかかり、言葉で拒否しても無理なら行動で示すしかないと掴まれた腕を振り解こうともがく。 けれど、酒に酔った男はそんなに体調が悪いとかいう理解できない解釈をし、チリを無理矢理居酒屋の外へと連れ出そうとした。 「いいかげんにっ!」 「あのすいません、この子が嫌がっているのでやめてもらっていいですか」 「……」 チリを掴んでいた手は後ろから伸びてきた手によっていとも簡単に離れた。 次は男の手が捕らえられ、驚きの声をあげる。 「なっ!」 「離せって言ってるんだ、聞こえなかったか」 「だれだよお前!」 なんで と思ったときには遅くチリの前に颯爽立ち塞がったのは、先ほど避けて通ったはずの東藤であった。 誰だと叫ぶ男に返答する気はなく、男の掴まれた腕をきりきりと骨を軋む音が聞こえるほどに東藤は力を入れた。 痛みに耐えきれず顔を歪ませる男、どうにか解こうともがくがピクリとも東藤の手は動かない。 「いっててて、くそ野郎なにしやがる」 「今すぐにどこかに行くと約束をしろ。それで手を離してやる」 「はぁ!?なにをいっで!」 「返事は?」 東藤は屈服のないまっさらな笑顔で男の腕を軽く曲げる姿は笑顔で人を殺すことを体現していた。 「はっはい!今すぐどこかに行きまので!離してください」 勘弁してくださいと必死に謝罪を繰り返したすえに、男は解放されると掴まれた腕を大事そうにしまい尻尾を巻いて逃げるかのように二人からすぐさま遠ざかった。 「あ……ありがとうございます。」 「べつに、通りかかっただけで」 何気なく自然な素振り。 東藤は気にしていないと分かっているが、呆然と二人のやりとりを見守ることしかできなかったチリ、再びざわざわと胸の内が騒ぎ無力な自分が痛ましく、後悔の念で下を向く。 「あとチリ、俺にもう一つ言わないといけないことがあると思うけど」
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