237人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「?お礼の品とか用意した方がいいですか。今お金ないので後日でお願いしたいのですが……」
「違うしいらない。そういうことじゃなくて。」
なんでかな、と東藤は少し落胆し呆れたように首裏を掻く。改めて言うほどの事はないチリには全く意味は理解できず首を傾げた。
「さっき嘘ついただろ。あの状況で全然大丈夫じゃなかったと思うけど」
「えっ……えっと自分ひとりどうにかできると思ったからで、手を借りる程ではないと判断を」
「助けてって言ってもか?」
「そっそうです。あんなのいつも通りにはじいてますよ。ちょっと今日はコンディションが合わなかっただけです」
「ふーん、それ何時も言ってるよな。やっぱり何回か未遂されやつの言葉の重さが違うな。
ああ、俺が助けて悪かったよ」
「……嘘ついてすいませんでした」
「わかったならいい。」
「子供扱いやめてください」
「可愛くないのな」
「そんなのいつもですよ」
にっこりと歯を見せ笑うと東藤はチリの頭を掻きまわし、前から変わらない子ども扱いにチリはムッと不満をいだくと撫でる手を払う。
「おーい、チリ大丈夫か。なんかあったのか……うわぁ」
色素の薄い髪を揺らして駆け寄ってきたのは武彦、そして心底嫌そうな声を漏らし二人を見る。
そんなに巻き込まれることが嫌なのかとチリは思いつつ、武彦には悪いが今日は先に帰らしてもらおうと話しかけようとしたが横から東藤が遮るかのように足立に挨拶をする。
「こんにちは、えっとジェフ君?だったか」
「東藤……さんイタンデスカ」
何時もの倍以上に武彦は片言で喋るが、外国人が片言で話すようなではなく緊張して口が上手に扱うことがままならない人のようだった。
「今日はチリと二人で居酒屋に?」
「違うヨ。みんなで宴会ダヨ、勘違いまじでヤメテヨね」
「そうか、まぁいいや。今からチリと帰るからそっちの方によろしく言っておいて」
「なにをいって」
「東藤さん何を勝手にいってるんですか。仕事はどうするのですか」大人しく聴いていたチリは目を見開き、東藤が勝手に進めるので服の裾を引っ張って話を待つように抗議する。
「ああ、もういいから帰れ。次は痴情の縺れか?勘弁してくれ俺はこれ以上の面倒はごめんだ。
馬鹿な客は騒ぐしオーナーぶっ倒れてるし、あーさいあく」
流暢な日本語。
外国人なりすましをやめたのか武彦は伸びていた背筋を緩め、腰に手をかけ、嫌そうな顔を全面的に出し始めた。
「チリ、後の事はどうにかするから先に帰れ。お前がいるとさらに厄介になりそうだしな」
「有難う、足立君」
「うぜっ、やっぱりお前嫌いだわ。
あと、つぎ厄介持ち込む気なら容赦しないからな。」
「注意はする」
武彦と東藤の間で威圧的でそして奇妙な空気が立ち込めたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!