5話

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お腹が減ったチリ。 ただ近くのコンビニで夜ごはんを買おうと来ただけなのに、ある文字に引かれてチリは思わず雑誌を手にした。 その雑誌の見開きはこうだった、人気急上昇中の俳優を独占インタビューと書かれ、イケメン、女性に人気一位、などたくさんの煽り文句と共に人物写真が載っていた。 雑誌に掲載されている事実に一気に遠い存在になった気がした。 その人物は墨のような真黒な黒髪は不気味で重たい印象はあるものの、持ち前のいい顔が爽やかに笑うだけでそれを一掃する。 写真うつりも決まっているとなれば、誰がみても曇りのない爽やかなイケメンが微笑んでいると思うだろう。 なんか不服だ。 「笑顔がうさくさい。でもこうも良く撮られるとまるで東藤が聖人みたいにみえるから不思議だね」 「……」 チリは雑誌を投げ出しそうになった。 雑誌に気を取られていたこともあり予期していない後方からの声に、体がビクッと飛び上がるほどに驚いたのだ。 そして、振り向かずともその声が誰であるか直ぐに分かったため、特にとりみだすことはなく落ち着きを払って振り向く。 そして自分と似た顔が映る。 「兄さん、突然来るのはやめてって言ってるだろ。一つ連絡ぐらい入れてよ」 「いいじゃん、兄弟なんだし。それに兄弟水入らずなんて言うし、それともお兄ちゃんが突然来て困ることがあるのかな?」 「別にないけど」  「なら、いいでしょ。」 「そういう話してない」 突然来るのをやめてほしいと深くため息を吐いても千紗は特に詫びることはなく軽く笑い流す。これからもやめる気はないらしい。 すると千紗が覗き込むようにチリが開いている雑誌を指さした。 「チリはほんとに昔から好きだね。1番最初のファンだったりして」 「……別にそんなんじゃ。ただ知り合いが載ってると思っただけで、好きとか嫌いとかの意識はしてない。」 チリは口ではそう言いつつもう少しだけ見たかったと名残惜しそうに雑誌を元の位置に戻す。 千紗には関係は一切言っていないが、好きなことはダダ漏れのようで想いに関しは知っているようだった。 けれど、千紗の言い方は気を許した友人に話を振るようなもので、恋の方の好きとは捉えていないようだ。 それを知った日には驚きの声を上げて慌てふためくだろうなと、考えるだけでもキリキリと胃がもたれた。
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