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机の上にはお土産の惣菜とコンビニの弁当が一つとワインが数本とチーズ鱈が並んでいた。
千紗はもう夕飯は食べていたのでチリは一人で夕食となった。
「綺麗に嘘を並べるとは、流石としか言いようがない」
そう言って千紗は雑誌を片手にワインを飲む。驚きはなく、苦笑しつつもアイツならとどこか納得していた。
チリが棚に戻した筈の雑誌は酒のつまみと一緒に千紗の手によって買われていた。
部屋に入った際、千紗は何食わぬ顔でチリにこれ欲しかったでしょあげると渡したのだ。
「要らないって言ったのに」
「だって、あんな悲しい顔されたらね。
それにせっかく集めているのに邪魔したら可哀想だったし」
「集めてない」
「あれ?なにを集めているのか訊いてないけどな。一体なにを集めているんだろ。」
「……千紗」
「素直になるのも良いことだと僕は思うな。どうせタンスの裏とかに隠しているでしょ」
「……」
「ふふん、正解だ」
お酒も入っている事もあり、ほんのり頬を染めて満足げに鼻を鳴らす。
兄弟で長年の付き合い千紗に隠し事をしても見透かされると、分かっていても決して口にはしたくはなかった。
それが正解だったとしても、自分から事実を吐かない限りは正解なのか不正解なのかは千紗にも分からない、という名の悪あがきだった。
「で、何が嘘だったんだ」
それでも、嘘だと蔑まれるほどあの人がなにを言ったのかまだ読んでいないチリはどうも気になってしまい、結局は欲に負けて千紗に尋ねた。
「えっとね、ほらここの部分とかこことか」
まだまだあるよと色々指されたがチリは一つ文書に注目した。
『もしも、好きな人が目の前に現れたらどうしますか?それとどう告白をします』
『そうですね。まずは話せるぐらいには仲良くなりたいですね。そしたら、少しずつ距離を詰めて、お互いのことを高めあってから告白をしたいです。』
『意外に奥手なんですね。こうもっと大胆にされるかと思ってました。俺の女になれよ的な感じで笑』
『僕ってそんなイメージなんですか笑
これでもすっごく臆病なんですよ。だから相手に少しでもいいから、僕に好意持って欲しいなって思うんですよ。』
『すごいですね!その発言で世の女子達はイチコロですよ!』
『また冗談を言わなでください』
このあとに対談はまだまだ続く。
だいぶプライベートにつけ入る際どい質問を投げかける無遠慮な記者に不快感を抱くが、そんなこと気を止めていないのか東藤はさらりとかわすように淡々と答えていく。
確かに千紗が言う通り嘘をついてると、言っても雑誌だ。
話題を作る為には多少の脚色は必要だと思う。
けれど沢山の話題がある中でこの文だけが妙に気になったのはいつの日か聞いた『臆「でも嘘ついたのか本音なのか分からないところが、昔から面倒というか厄介というか」
千紗はワインを一飲みすると、またコップにワインを注ぐ。
「あれが何考えているのか、さっぱり。
だからチリ、油断したらダメだよ。友達だからって油断したら、いつトラブルに巻き込まれるか分かんないよ」
「って東藤さんをなんだと思って。言っておくが俺男だぞ」
「うーん朴念仁?」
「酔ってるな。お酒やめて、さっさと寝ろ」
思考が回っていないとチリは千紗から酒を奪うとえーケチっと力のない非難の声を上げる。
ヘニャヘニャと項垂れる千紗。兄さんの方が危ないのではと、警戒心なんて皆無の姿を見てチリは酒を飲んでいないのに頭が痛くなった。
「だってここの東藤なんて、奥手じゃなくて優しくしてから逃げ道を無くすって意味で、恐いと思わない」
「はいはい、分かったから酔っ払い」
「ちゃんと聞いてよ」
ムゥと千紗は頬を膨らませるのだ。病』と書いてあったからだろうか。
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