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「で、何で悩んでる。それともついに東藤と別れたか。」
「毎回言っているが別れてないし、付き合ってない。」
恋人という生易しい関係ならまだ希望があるかもしれないが、あの関係が始まったと同時に恋人になるという権利はなくなっていた。というのに付き合ってないとか冗談言うなよと肩を揺らして武彦は苦笑する。
あまりいい話ではない。バーを後にしてチリと武彦は場所を変えて話すことにした。それに話を聞いて落ち込んでいくオーナーにこれ以上の負担は良くないと思っての事でもあった。
その場所はチェーン店のファミレス、夜中のため人は少なく席は広々と使え、店員も必要時しか動かないので、デリケートの話をするにはいい条件であった。
「俺はただ終わったことに後悔しているだけで、お前に話す事はない」
「なるほどな。もう東藤と話す気はないらしいな」
「そんなこと言ってない」
「そんなこと言ってる。はっきりものを言えるくせしてアレのことになるとためらう訳。」
「……うるさい」
「はいはい、まぁどう転がったらそんなにもつれるかこっちが聞きたいぐらいだが、酔ったときの話してやる。」
「これを言うと俺が面倒になるんだけど」と一言付け加えて、口を重たそうに開いた。
「前に店で酔ってスタッフルームで寝たこと覚えているか」
「微かにだけどそこまでは覚えいる。寝て気づいた時には、東藤……別の場所にいると思うぐらい記憶は飛んでいるが」
「まぁ東藤の家にワープしていると思うだろな、あんなデロデロのお前初めてみたし」
武彦の苦渋の表情は思い出すだけでも苦労したことを物語る。
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