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8話
元気でね。私の一番可愛い子
そう言って母は俺を玄関に置いていった。
最高の妻と最高の子に恵まれて幸せだよ
そう語っていた父は部屋で知らない女と抱き合っていた。
好き、愛している、好意の言葉は嘘だらけの空っぽだ。
なにも形がない愛情を証明するだけの外側だけ綺麗に塗り固めた中身は空っぽの意味のない言葉、ただ相手を信頼させるためのただの道具だと。
いつだったろうか、ベッド上で名前も覚えてない彼女にこの事を吐露したことがある。
気まぐれでした話を最初はなにを言っているか分からないと驚いた表情をしていた。
そして徐々に哀愁を漂わせては穏やかにそんなことない愛はあるんだよと彼女は優しく語った。
俺の髪の毛を撫で、そして可哀想な人本当の愛を教えてあげると顔に手を添えるとキスをする。
慈悲込めた瞳。けれど相手が見ているのは決して俺ではない。
どんな風に利用しようか、口は動かなくてもそんな企みが耳元で囁いた。
ほら、愛なんてものは所詮は道具だと言葉なんては全て嘘。
だから俺もその道具を利用する。これからの人生を後悔しないよう順調に歩むためにも。
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