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第2話 帰れない
女性たちはアマンダに群がると大きな魚が入ったカゴを御神輿のように担いで運んで行った。
アマンダは微笑みながらその様子を眺めていた。
俺はアマンダのその微笑みにどこか癒された。
客人ということで俺は早くも村長の元へと案内された。
村の平均身長が高いせいか建物も大きく見える。
付き添いでアマンダも一緒だ。
応接室なのかソファーがあり、机があり、会社の応接室を思わせる作りだった。
俺たちが入ったあとに長老も入ってきた。
長老もやはり女性だったが俺と身長は変わらなかった。
失礼ながら長老と言うからヨボヨボとした人が出てくると思っていたが、背筋は伸び、シワもたいしてないまだ20代と呼べる年齢ではないかと思った。
少なくとも俺よりは若い。
ソファーにお互い座ったところで長老は口を開いた。
「田中一郎さん……ですね」
「はい」
凛とした女性の声だ。
「それでは何があったかお聞かせください」
「私は日本という国にいたのですが、いつの間にかジャングルにいたのです」
これしか言いようがなかった。
「そうらしいのです。長老、そんなことがあるのでしょうか?」
長老は「失礼」と言うと煙管に火をつけ、吸い出した。
「伝説の類としてだが、ある。ただ私もお目にかかるのは初めてだよ」
「伝説とは?」
俺の代わりにアマンダが聞いた。
「別の世界の人間を呼んでしまうことさ」
「それはなぜ起きるのですか?」
「その人間と世界の波長が合った……というのがわかりやすいですね。こればっかりは神のみぞ知るというやつですから」
「他にも、この世界に私のように来た人がいるのですか?」
「ええ。この村ではアナタが初めてですが。他の村で、あるいは世界ではあると思います」
「他にも世界があるというのですか?」
「ええ。現にアナタは別の世界から来たじゃありませんか。アナタの心がこの世界に引き寄せられたのでしょう」
「そんな……帰る方法は無いのでしょうか?」
「残念ながら帰れたという伝説は残ってないですね」
俺はそれを聞いてからの記憶がない。
「お目覚めになりましたか?」
アマンダや長老とは別の女性の声が聞こえた。
俺は気が付くとベッドの上にいた。
「俺はどうしたら良いんだろう」
誰に聞かせるのでもなく呟いた。
看病してくれていたであろう女性は気が付くといなくなっていた。
少し、彼女に聞いてもらいたかったから残念だ。
そう思ってるとアマンダと長老がやってきた。
「お目覚めのようですね」
「ええ。すみません。気絶してたみたいですね」
「無理もありません。私も突然知らない世界に来たらきっとアナタと同じになっていたでしょう」
「はは。さて、これからどうしたら良いでしょう」
俺は思わず俯きながら言ってしまった。
元の場所に未練があるわけではないがせめて事前に準備していたら。
部屋の解約や会社に辞表だって出したかったなとこの状況でも思ってしまうのは小心者だからだろうか。
しかし、戻れる方法がないのでは仕方がない。
「俺、この世界で生きますよ」
「そうですか。私達、村の者たちは歓迎しますよ」
「よろしくお願い致します」
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