青くて醜いKの心臓

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 そしてKとの新婚生活が始まった。一年限定とはいえ、それは私にとってすばらしい日々の始まりだった。  Kには青みのある食材を一切とらないというこだわりがあり、調理はKの担当となった。  たとえばある一日の献立はこうだ。  朝。  紅茶。黒パン。イチゴジャム。ハムステーキ。トマト。  昼。  ミートスパゲッティ。オレンジ。  夜。  パエリア。バターコーン。にんじんのグラッセ。赤ワイン。  青どころか、白や緑の食材もなるべく摂らない。青光りして見えるものすら体が受け付けないのだという。 「これ以上青いものを摂ったら血液まで青くなってしまうよ」  そう言ってエビを放り込んだKの口の中はごく普通の桃色をしていた。  心臓が青いのに血液は赤いなんてことがあるのだろうか。ふと疑問に思ったが、目の前に置かれたワインも瓶と液体とでは色が違う。 「どうかした?」 「いいえ」  Kを信じきれない自分を恥じながら、私はワイングラスに口をつけた。そしてパエリアのエビを剥きながら思った。Kと同じ食事を摂り続けたら、私の心臓は何色になるのだろうか、と。 *
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