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「寺井先生は、門倉校長に呼ばれたと」
「ああ」
「前職も確認しました。元陸上自衛隊特殊作戦群、二等陸尉」
「懐かしい肩書だ」
「もし良かったら退職した理由を教えてもらえませんか? 入隊後、すぐにレンジャー資格を取得し、冬季遊撃課程を修了。特戦群に所属してからも優秀だったと聞きました」
「あまり持ち上げないでくれ」
苦笑いしながら続ける。
「よくあることだよ。海外派遣での《NE》討伐任務で負傷したんだ。右足に深達性Ⅱ度の熱傷と、小さな鉄の破片がいくつも刺さってね。乗っていたハンヴィーが《NE》に引っくり返されて炎上した。助からなかった仲間もいた。その《NE》を殺し、気付いたら病院のベッドの上だった」
「傷の後遺症が?」
「いや。右足は一か月ちょっとで動かせるようになったし、破片も全部摘出できた。後遺症はなにもない。ただ……」
少し口がごもり、足を止めた。
「……妻に泣かれてね。二人の子供も泣かせてしまった。今まで自衛官として務めてきた。日本国の為に大義を全うしてきた。それを国から家族に変えた。それだけだよ」
「その決断は、素晴らしいことです」
「そう言ってくれると嬉しいよ。藤村二佐からは一等陸尉への昇進を持ちかけられたが、丁重に断って退職した。家族と時間を過ごして次の仕事をどうするか考えていた時、藤村二佐から連絡を貰ってね。次の就職口の推薦をしたい、と」
「それがここという訳ですか」
「まぁね。これでもちゃんと勉強して、特別教科限定の教員免許をとったよ」
特別教育機関の設立に伴い、特別教科限定の教員免許などが作られた。その免許を寺井は佑一に見せた。
「君がここに来た理由は把握している。藤村二佐と門倉校長からサポートするよう頼まれてる。それを含めて、君の力を借りたい」
「授業なんて出来ませんよ」
「実習授業の手が足りなくてね。大抵はクラス合同なんだが、生徒の数が多くて面倒が見切れない。あとは、男一人いれば少しは心強いかな。なんせ皆、女の子だから。どう頑張っても多数決で負けてしまうし、口達者でね」
「それは難儀な役回りで……」
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