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専用教室棟の二階にある教室で二人は立ち止まる。室名札は空白のまま。寺井が開けて中に入り、佑一も続く。
中は教室の三分の一ほどの広さ。片方の壁側に資料棚が置かれ、奥に事務机が置いている。こじんまりとした事務室だ。机にはデスクトップパソコンが設置されており、机の横には保管用のガンラックもある。
「君の仕事部屋になる。好きに使ってくれ」
「普段、生徒達はこの棟に来ますか?」
「火器管理係が来るけど、その部屋は一階だ。滅多に来ないと思っていい。銃は持参してもいいし、学校の物を借りてもいい」
「自分の銃を持参します。費用は負担しますので、弾薬はできれば学校から頂きたいです」
「費用のことは気にしなくてもいい。弾薬代は学校が持つ。あまりに珍しい物だったり高価な物は持参してくれ」
「ここでの仕事を再確認します」
「基本的には特別教科の担当教員の補佐をしてもらう。だけど君の場合、自衛隊からの任務を考慮して生徒達の任務に同行することになる。場合によっては指揮することにもなる」
「心得ています」
「他に質問は?」
「ありません」
「よし。それなら今からちょっとしたイベントをこなそうか」
「イベント?」
「自己紹介」
◇
「陸上自衛隊から来ました三上佑一です。皆さんの力になれるよう努力していきます。よろしくお願いします」
そんな自己紹介をかれこれ八回言った。佑一はうんざりしてきたものの、表情には出さず、かといって笑顔を振りまくこともなく、無表情に近いまま淡々と繰り返した。
寺井に連れられて授業中の教室を歩き回り、簡単に事情を説明してもらい、佑一が短く自己紹介する、という流れだ。授業中ということもあったが、その場にいた教師含め、生徒達の反応は様々だった。冷ややかな視線や、珍しげな視線で見られていた。
「はぁ」
佑一の仕事部屋となる事務室に戻り、思わず溜め息を小さく漏らしてしまう。
「お疲れ。いい時間だから昼休みといこうか」
寺井は職員室に戻らなかった。事務室を見回し、積まれた段ボールの隣に置かれていたビニール袋の中身を佑一に渡す。寺井から渡されたのは、学校の近くにある大手弁当チェーン店の唐揚げ弁当とペットボトルのお茶。受け取って食べ始める。寺井は事務室の隅に置かれていた簡易椅子を持ってきて、向かい合うように食べ始めた。
「午後から合同授業で演習場に向かう。君も着いてきてほしい」
「また自己紹介ですか」
「それもだが、君の任務にも関わることだ。最近、部隊編成を行うことが決定して、先日に編成が完了した。その部隊育成に力を貸してもらいたい」
「なんで部隊編成を?」
「ISCから要請がきたんだ」
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