第二章 あなたの好きなものは何ですか?

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 IDEI(International Designated Educational Institution)は、ISCが定めた国際指定学校のことであり、他の指定学校が《NE》からの防衛を掲げる中で、である。それにより国や軍、軍需産業などからスポンサーを多く抱え、レベルの高さは他の指定学校と比べても群を抜いている。  ほとんどの生徒が前線へ赴くほどの実力を持っており、結果が求められる故にハードルが高い。常に死の危険が付き纏い、それ相応の覚悟が必要だ。  IDEIはISCにより主要各国に設立を促しており、日本にも存在する。自衛隊との関わりはなかったが、佑一個人は自衛隊所属となり関係を保っている。 「はーい。質問」  先程乗っかってきた生徒が手を上げる。一七〇センチを超えた身長。スレンダーな体型で、筋肉が良く引き締まっている。肌は少し日に焼けていて、ショートカットの黒髪と相俟って健康的で快活な印象を与えた。 「……えーと、伊崎さんだっけ」 「そうです。普通科二年B組、伊崎真由(いざきまゆ)です」  真由は続ける。 「ちょっと辛い食べ物で何が好きですか?」 「そこに食いつくの?」  思わず生徒からツッコミを入れられてしまうほど、場違いな質問で笑ってしまった。周囲も笑っていた。 「いや、先生のこと何も知らないからさ。いい機会だから色々聞いとこうかなって。知らない人から教わるより、知ってる人から教わる方が断然いいし」 「まぁ、同意できる」 「というよりも年同じくらいだから敬語なしでもいいんじゃない?」 「さすがにそれは駄目でしょ」 「いや、伊崎さんの言う通りかな。自分は敬語じゃなくてもいい。それに、先生と呼ばれるのは正直恥ずかしい」 「ほら! じゃあ佑一でいい?」  脱線してきたところで寺井が手を叩いて割って入った。 「こらこら。一応、今は授業中だぞ。交流を深めるのはいいが、授業中と教師達の前ではちゃんとした呼び方で呼ぶように」  寺井の言葉に栞は頷く。 「そうね。寺井先生の言う通りよ。その代わり、休憩中や放課後とかは敬語なしにしましょう」 「わかりました」 「ということで、これからよろしくお願いしますね。三上先生」  栞にそう言われ、先生を強調してからかわれているのがわかった。先が思いやられるが、とりあえず友好的な交流はできそうなことに安堵した。
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