16人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
新設された部隊の顔合わせを終え、昼前に解散となった。
佑一は寺井の運転で街まで行き、寺井の奢りで昼食をご馳走になった。食事を済ませて再び演習場へ。自分の銃を整備していると、指定された時間に車が集まってきた。それは鐘ヶ江高校の特別教科授業を担当する教師達だ。教師達は皆、自前の銃を降ろし、慣れた手つきで整備を始めた。そこに門倉も現れた。
「空いた時間となればこの日ぐらいしか用意できなくてな」
「問題ありません。ただ、後の予定もありますので」
「把握している。手早く終わらせるつもりだ」
演習場に来た理由。それは教師達が佑一の実力を確かめる為だった。前日の夜に試験を行うことを寺井から電話で聞き、送迎するから準備するようにと言われていた。
この場を設けた理由は単純明快。佑一の実力を知る為だ。
準備を進める中、門倉は教師達に知られないよう佑一の耳に顔を近づけた。
「近接格闘の模擬戦闘。吐かせてもいいが骨は折るな」
低いその言葉を聞き、佑一は理解した。門倉は教師達が勝てるとは微塵も思っていない。
「逆に折られるかもしれませんよ」
「つまらん冗談はよせ。君のことはよく知っている。どう足掻いても勝てんのは知っている。君の立場が上だということを思い知らせる為の機会なのだ」
つまり、門倉はわざわざ教師達を痛い目に合わせる為だけにこの場を用意した。佑一の立場が上であることを確認させる為だけに。
──捨て駒扱いか。
門倉のやり方に、佑一の目つきは自然と鋭くなる。彼の本質は非情なのだろう。
何故、鐘ヶ江高校が指定学校として生き残れたのか、少しだけわかった気がした。
「わかりました。遠慮なくやらせていただきます」
「それで良い」
最初のコメントを投稿しよう!