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「それよりも」
佑一は口を開いた。
「今日の援護任務で、研究所の幼馴染みと会いました。里林梨絵です」
藤村の雰囲気が変わる。佑一は変わらず続ける。
「自分が研究所を出て以来、全くわからなかった」
「里林梨絵か」
真っ直ぐな佑一の目を見て、藤村はソファーを立ち、事務机に置いていた資料を渡す。その資料にはとある学校の詳細が記載されていた。
「私立の鐘ヶ江女子高等学校……女子高ですか?」
「一〇年程前に就任した校長が元自衛官だ。退職した隊員などを特別講師として招き、年々レベルが上がってきている」
「何でこんな物を……」
資料を捲っていき、リストアップされている生徒を見て言葉を失った。
懐かしい感情などはなく、ただ衝撃でしかない。
彼女の顔写真が載っていた。この学校の生徒として。
「彼女が、ここに?」
「日本に数か所あるISCの研究機関から、自衛隊への所属が七か月前に正式に決定された。日本国内には数人しかいないエクシードプランの成功被検体となった彼女だ。機密事項により、お前には報告できなかった」
藤村は室内に置いてあるコーヒーメーカーでコーヒーを二人分淹れて佑一に渡す。啜って、ソファーに腰を下ろす。
「三上佑一。特別教育機関の人材育成及び里林梨絵の監視任務を言い渡す」
今度こそ、佑一は「え?」と声を上げた。
「不満そうな顔だな」
「……あ。いえ、そういう訳では。しかし育成と監視が任務というのは?」
「どちらも、鐘ヶ江高校の校長である門倉氏による依頼だ。生徒の人材育成を行いながら、里林梨絵の監視をしてもらう。自衛隊所属となった彼女には担当官が一人いるが、四六時中見ている訳にもいかない。学校にいる間、佑一に監視してもらう」
「監視、ですか……」
「問題はあるか?」
佑一は資料を見る。
彼女がいる。幼馴染みがいる場所へ。
資料を閉じた佑一は小さく息を吸い、立ち上がった。
「わかりました。問題ありません」
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