第一章 三上佑一の出会いと世界の日常

7/13
前へ
/170ページ
次へ
「時間はある。ゆっくり回ろうか」  寺井に案内される形で校内を回る。 「私立鐘ヶ江女子高等学校は、初めから特別教育機関に指定されていた訳じゃない。政府から予算援助を得る為に申請し、通過したというのが始まりだ」 「特別教育機関のあるあるですね。予算援助目的の学校がいくつも存在して、その多くは早々と指定解除を受けてしまう」 「ISCからの評価で左右されることが多いからね。ISC直属や、国が直接支援しているならまだしも、援助目的の学校はすぐ見抜かれてしまう。《NE》の対応が甘いだとか、資金目的でなにもしない、もしくはなにもできない」 「無駄に死人を増やすより良いことだと思いますがね」 「その意見には賛成だ。あと一年で現状を向上させることができなければ、指定解除を宣告されたその年に門倉さんが校長に就任した。元自衛官を特別講師として呼んだり、成績向上に努めて解除宣告は免れた。そこからレベルが上がっていき、近年は注目される程になっているよ。特別教育機関では珍しい女子高っていうのも受けがいいからね。安心して預けられるっていうのもいい評価だ」 「一般科目や、学校行事や部活動も積極的ですよね。大抵はそこまで回らない」 「積極的というか、校則が自由かな。普通の学校のように生徒の自主性を育むみたいに」 「一つ質問を。自衛隊OBが校長になれますか?」 「それか」  寺井は少し笑う。 「あの人は、元々理事会の一員だった」 「理事会?」 「学校の理事会。内外の学校構想を一本化させる為に、自衛隊の力も借りて無理矢理に校長へとねじ込ませた。かなり強引なところもあったけど結果的には良かった。そこから援助やスポンサーが増えてね。施設も充実してきた」  学校を見て回った佑一は頷く。新しく建てられたもので、相当の費用をかけられているのが一目でわかる。大抵の指定学校は、元々ある校舎を改装などして使用しているが、鐘ヶ江女子高等学校のように一から新しく、それも丸々一棟を使うようにするなど、中々できることではない。  それもこれも、門倉の手腕によって成されたものであり、また彼に従った者達、そして学びを受けた子供達による結果である。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加