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その9
吉田の入った二次元同好会のとある先輩は、やはりだいぶ変わった人だった。
……
「吉田、我々は翌日より例の作戦に取り掛かる。美術部所属、“ホシノ隊員”を本日の最終下校時刻までにこちらへお連れしろ」
「ラジャー!!」
……
という具合で、二次部(二次元同好会)に俺(カズキ)は連れて来られたらしい。
全く、いきなりすぎる…
でも、何が起こるかわからない感じがして、俺はなんだかそんな二次部が少し気に入っている。
「…で、ハマ先輩、俺に用って何でしょう??」
何かと吉田関連で二次部に足を踏み入れることが多くなっていた俺は、すっかり三年生部長のハマ先輩の、そして二次部の顔見知りだった。
「ホシノ別部隊隊員。我々の任務への、協力を要請する」
ハマ先輩はどこぞのアニメよろしく俺に向かって敬礼をする。
…要するに、二次部ではない俺に頼みがあるらしい。
「なんですか?頼み、って」
すると吉田は1メートルほどもある、丸めた紙を持ってきて俺の前で広げて見せる。
この絵は宇宙だろうか?
ハマ先輩は後ろで手を組み、姿勢を正したまま困った顔で俺に説明する。
「ホシノ隊員。前方左舷側、接近中の機体の想像図を描き入れられたし」
…要するにこの宇宙の絵の左側に、俺なりのロボットを描き入れてみてほしいのか。
ハマ先輩の言動は、仲良くなるにつれてこんな変に凝った感じになっていった。
他の人が聞いたら、これはどれだけ分かりづらいんだろう?
俺は苦笑しながら聞く。
「想像したロボットは別紙に描いて、切りぬけばいいですね?すいませんが俺も美術部で別の作品を作り始めたところなんで、空き時間に簡単にでいいですか?」
「了解した。済まないがホシノ隊員は本作戦における我々の希望だ、健闘を祈る」
ハマ先輩はまた真面目な顔で敬礼。
そばにいた吉田は敬礼のまま、昔のアニメの主人公よろしく爽やかに俺に向かってウインクを送っている。
…よっしー、すっかり俺の前でハマ先輩の言葉を通訳しなくなった…手を抜いたな〜…
けっきょく吉田の通訳が無くても、ハマ先輩の言葉を解読できるようにまでなってしまった俺なのであった。
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