その14

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その14

 渡瀬がある日、俺と吉田に相談を持ちかけてきた。 「…っあ〜…仁科の気持ちが分かんねえ!『渡瀬くんは“オンナゴコロ”が分かってない』とか言うんだぞ!?どうしてほしいんだ、あいつ…!」  仁科というのはうちのクラスの女子の一人だ。  そんな“オンナゴコロ”だなんて、俺にだって分からない。  もちろん、それとは無縁であろう吉田なんかはもっとだろう。  すると吉田が何かひらめいたらしい。 「…あ。じゃあさ、トバ先輩に相談してみるか?」 「あの、トバ先輩?」  俺はすぐに思い当たる。  トバ先輩というのは、吉田のいる二次元同好会(二次部)の部内一、二を争うゲーム好きな先輩のことだ。  しかしその先輩のしているゲームというのは、俺の知っているような『仲間と旅に出る』というようなゲームではないらしく…… 「トバ先輩、ギャルゲー全般詳しいんだ!」  吉田が得意げに言う。 「“ギャルゲー”??」 「ギャルゲー、ってのは、男子(男性)主人公を操作して、女のコと恋愛するゲームなんだって。トバ先輩はソフトのゲームだけじゃなく、アプリも片っ端からやるんだ!」 ※吉田くん、そしてトバ先輩たちはみな高校生のため、『18禁(R−18)』といわれるゲームまではプレイできません。 ご了承ください…  …“ギャルゲー”好きのトバ先輩と渡瀬の相談、一体何の関係があるというのか。  吉田は続ける。 「それだけじゃないぞ!『乙女ゲー』って言って、女子(女性)主人公で男子(男性)を攻略するゲームも網羅してるんだ!先輩なら“オンナゴコロ”、分かるんじゃないか??」  聞き終えた渡瀬は突っ込む気力もないらしく盛大にため息をつく。 「…そういう問題じゃ、ねえぇ…」  俺の方は苦笑い。  なぜか二次部によく行く羽目になる俺だが、例のトバ先輩には今まで現実に“好きな人”も“彼女”もいなかったことを、俺は知っている。
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