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その19
今日は日曜。
吉田の家に行き、一緒に残りの宿題をやることになっている。
「拓実くん、いますか??」
(吉田の名前は『拓実』)
家のチャイムを鳴らして出てきてくれた吉田のお母さんに尋ねると、部屋に上がっていいと言ってもらったので向かう。
「よっしー、来たよ」
部屋の外からそう声を掛けると、中からは「うわぁぁ…!!」と大きめに嘆くような声。
「え、どうした!!?」
俺が驚いてすぐに部屋のドアを開けると、吉田はパソコンの前に座り落ち込んでいる。
画面を見れば、どうやら俺が来るまでの間にヒーローものを観ていたらしい。
「よっしー??」
また俺がすぐそばで声を掛けると、吉田はようやくこちらを振り返って言った。
「叫べよ〜…せっかくだから『必殺技』は……」
…俺は、一体何を言われたのか…
「必殺技、叫んでくれえ〜…カッコイイのに、もったいねええ…!!」
…どうやら吉田は、観ていたヒーローが必殺技を叫ばなかったのがお気に召さなかったらしい。
「…よっしー、宿題やろう」
俺の言葉で、吉田は俺の顔を凝視したまま目は一瞬点に。
そして…
「…うん」
吉田はやっと現実に戻ってきたのだった。
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