その20

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その20

 今日は吉田と一緒に、『アーツ』の作品展示イベントにやって来た。  入り口からして、アーツをかじった程度しか観ていなくてこのような場所は初めてな俺でも、すごい気の入れようなのがよく分かる。  もちろん、意気揚々とやって来た我らが吉田も負けてはいない。 「っ、すっごいな!!ヤバいぞカズキ〜!!あの壁のイラスト、第一期のコウモリ男と格闘したときの必殺ポーズだ!!あ、あれは特殊変身のときのっっ!!うわああ、あれは原作者が直筆で書いた抜き出しのセリフだああ!!」  吉田の勢いは止まらない。  あちこちで立ち止まっては、何とか声を押し殺しながら叫び声を上げている。 「お、落ち着いて、よっしー……」  俺はそう言い、赤面しながら周りを見渡した。すると、 「っきゃああ……!今流れてるの、挿入歌だよ挿入歌!決戦のときコレ流れるの!あ、あれはアーツの設定資料じゃない!?ヤバいよ、私泣きそう!さっきのはね、変身後にすぐ流れるBGMだったの!!カッコ良くない!?カッコいいと私は思うんだ〜!!……」  俺たちよりだいぶ歳上らしい女性二人組の一人が、声を押し殺しながらも見ただけでよくわかるハイテンションで喋っている。  その人と一緒にいる人の方は、オロオロと苦笑いで友人らしい彼女を小声でなだめながら。  ……俺のよく知る誰かさんと、ソックリ……  気付けばこの展示スペースにいる人たちは、吉田まではいかないまでも目をかなりギラギラと輝かせながら展示に見入っていることに気付く。  置いてあるものがかなり好きな人たちにとって『聖域』とも呼べるような場所がこの世の中にはあることを、俺はこの日初めて知った……
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