その22

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その22

 吉田が所属する『二次元同好会(二次部)』のメンバーは、  三年のハマ先輩、  二年のトバ先輩、  一年の吉田ときて、 もう一人の二年生に、“ウエノ先輩”がいる。  通称“ウエッチ”。  ウエノ先輩はアニメやゲーム、時代劇なんかに出てくる武器、特に『剣』や『刀』を見るのが大好き。  日曜大工も出来るほど器用なので、夏休み中のバイトの合間を縫ってオリジナルの日本刀のようなものを作り(もちろん斬れない)、それに見合う防具まで手作りしてしまったほど。 (ちょっとした『コスプレ』ができるほどの出来)  学校の文化祭の日。  二次部の展示室に呼ばれた俺『カズキ』は、自分が美術部にも関わらずハマ先輩の頼みで吉田と一緒に行方不明のウエノ先輩を探しに行くことに。 「よっしー、先輩を最後に見たのはいつなの?どこに行ったのかくらい検討つかないと……」 「いやあ、先輩は二次部の展示の宣伝看板を、色んなとこに置きに行っただけのはずだからなあ……」  ハマ先輩は展示室で“店番”、トバ先輩はクラスの方の出し物の手伝い。  次は交代で吉田とウエノ先輩が、展示室の店番をすることになっているんだけど…… 「トバ先輩、すみませんがウエノ先輩を見かけたら教えてくださいね~」  途中で見かけたトバ先輩にもそうお願いし、校内を探しながら吉田と二人で校門のところまで。  すると……  なぜか携帯やカメラを構える、人だかり。  その真ん中には、人の頭一つ抜き出た見覚えのある顔が…… 「「ウエノ先輩ッ!!」」  けっこう背が高く大柄めなウエノ先輩は、よく目立つ。  その目立つついでにこの時の先輩の姿は、自作の『鎧』姿に、自作の凝って作った『大剣』所持で……  ……これで目立たないはず、無いよな。  文化祭に来たお客さんの写真撮影に笑顔の“戦士”姿で応じていたウエノ先輩は、けっこうな“お調子者”なのだった。
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