その6

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その6

 夏休みが終わりに近づいた頃、俺は吉田と毎年恒例でしている、お互い宿題をもう終わらせたかを聞き合った。  すると吉田の返事は、 「いやあ、現代文とか古文は得意でもないからなあ……レポートは時間かかった!!」  そう言って苦笑いで頭を掻いていた。  確かに吉田は毎年の読書感想文も時間が掛かっていた。  中学の頃から提出して返却されると二人で見せ合っていたため、吉田の作文の実力も知っている。  本当に俺も吉田も、うまくもなく普通の文章だと思う。  しかしふと思い出すと、吉田の夏休み前に書いていた二次元同好会でのアニメ感想は、とにかく早く仕上がっていた。  自分の好きなことを書くんだから、それは早いに決まっているけど…… 「……ねえ、よっしー、二次部(二次元同好会)で前に書いてたアニメ感想、俺に見せてみてよ」  俺の、ほんのちょっとした出来心。  感想文やレポートの出来と何が違うのか、なんだかとても気になったからだ。 「あ、いいよ。今持ってる」  吉田はそう言って、レポート用紙を広げて見せてくれた。 『第一話本編……リメイクだが評価もうワンチャン上いけたと思う。それでも w 。さらに芝、森になるほど……』 『………』 『……最終回は原作へのdisりが若干入っている様子あり。ラスト辺りの演出は一期そのままのため今や微レ存展開。ネット評価のとおりだが、初代のラストと比べていた人がいて乙。主人公が……』  どうやら一つのアニメ全話の感想が書かれているらしいんだけど……  ……なんだろう、異世界の言葉かな。  俺は生暖かい目で吉田を見ると、そのままアニメ感想が書かれた紙をゆっくりと折りたたみ、吉田にそっと返した。
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