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第1章 Seed《種》9
一旦敷地を出るフリをして、外から回り込んでそうっと地下に入る。
「熊さーん。まだ生きてますかー?」
「生きてるよ……どうにかな」
敷いていた毛布を壁と背中に挟んで、リリアスの問いに答えると熊は上半身をゆっくり起こした。
「脚の調子はどうですか?」
「痛い」
即座に言い放つのでリリアスは苦笑いする。
「そうでしょうね。包帯換えますので見せてください」
と言いながらまだリリアス自身が大きな傷を目視することに慣れていないので、目を最大限細めながら傷口をチェックする。
すると、出血は治まっているようでひとまず安心する。
明るい場所で改めて確認するとこんな大がかりな処置を、よく自分ができたなと思う。
「完全治癒には時間がかかるでしょうが、とりあえずは大丈夫のようです」
新しいガーゼをつけ変えると、リリアスは持ち込んだ食料を渡した。
「これ、食べてください」
「おっ悪いな。腹減って飢え死にしそうだったんだよ」
熊は長い爪でバゲットを上下に裂くと、器用に尖った先を使って交互にチーズとハムを挟む。鋭い牙が覗く口を開けて大きく一口かじった。
その様子をリリアスはじいっと観察する。
仕草は人なのに、見た目は完全に熊そのものだ。
みっしりと固い毛に被われた身体のどこかに実はチャックがあって、普通の人間が出て来そうだ。
見れば見るほど不思議だった。
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