第1章 Seed《種》20

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第1章 Seed《種》20

 一ヶ月が過ぎ、脚の外傷がほとんど塞がったので抜糸を施すことになった。 「よしっ、全部取れたよ。糸」 「おーやったやった。てことはこれで人型解禁か?」 「うん。…ってわわわっ! まだダメだって、服ないんだから!」  すぐさま人型に変化していくテオに慌てて両目をふさぐ。 「なんだよ、男同士なんだから別にいいだろ」 「やだ! だめ!」  二度目に改めて見ると人型のテオは、少しの療養なんかじゃ衰えない曲線美の筋肉をしなやかにまとっていた。  そしてやっぱり息を飲むほど顔面の造形が整っている。  鼻は何度見ても驚く形の良さで、髪色が茶色なので余計に瞳の澄んだ青色が目立つ。吸い込まれそうだ。  人型で歩いていたら、まず獣族の、それもクマ科なんて誰も思わないだろう。  この人と一ヶ月も二人だけで過ごしていたのかとリリアスは改めて呆けた。 「と、とりあえず、僕の服着てってば!」 「無理だって、おまえと俺じゃサイズ違いすぎるだろ」  仕方ないのでその日のうちにリリアスはテオ用のTシャツ数枚とデニムを二本買ってきた。  人型のテオに萎縮せず普段通り話せるように、せめて獣型の面影を残そうと、シャツはアニメのクマが正面にどかんとプリントされたものを選んだ。  本人も気に入ると踏んだのだが、生地を広げ「なんだこのダサい服は!」と散々文句をたれていた。  けれど結局、換えが少ないので大人しく着用している。  それからほとんどの時間テオは人型で過ごすようになった。  訊けば負傷時や生命の危険を感じたとき以外では、獣族はほぼ無意識下で人型を保てるのだという。  変化が自在になるのはだいたい五歳頃とのことだ。 「赤ん坊だって成長と共にトレーニングして、トイレでちゃんと用を足すだろう? 同じ原理さ」  しかも人型でする運動や筋トレの方が負荷がかかって効率が良いらしい。  この前部屋に入ると腕立て伏せにて四桁の数字をカウントしていたので嘘だぁ、と懐疑的に一から眺めていたことがある。  すると本当に軽々と千を超えたのでびっくりした。
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