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第1章 Seed《種》24
「下ネタはんたーい!」
「なんだよこれくらい下ネタでもないだろ。おまえにだって付き合ったことくらいあんだろ」
「…ないもん」
「マジかよ? じゃあまさか童貞…」
「うるさいな! そうだよ悪いか!」
また笑われると思ったのだが、本気でかわいそがられている。
慈悲深い視線が、逆に心をえぐってくる。
「リリアス、おまえまだ若いんだから人生を楽しんだ方が良いぞ」
「本人の勝手だもーん。で、質問に戻ってよ」
「知らんが、一緒なんじゃないか。獣族でも拷問に弱いやつは弱いし、多少獣族の身体が強固な作りでも人族と同じ負傷や出血で死ぬからな」
「じゃあなんでテオは麻酔なしでもそんなに平気なの?」
「俺は、心に麻酔がかかってんのさ」
「どういうこと?」
「今まで戦地の第一線で仲間の死を目の前で沢山見て来たし、俺自身も傷負うのなんて日常茶飯事だからな。ちょっとやそっとじゃあ痛みを感じずらくなってんだろ」
痛いことに鈍感になるとはどういうことだろう。
普通に聞いたらちょっと信じにくい言葉だ。
しかも、ちょっと前まで血を見れば吐き気を催していたリリアスにとっては尚更。
でも、痛みに対する恐怖を少しも感じていないテオを実際、最初から見てはいる。
「…それも、『そういうもん』?」
「おお、わかってきたな」
満足そうに頷くが、リリアスには不満が募るばかりだ。
鈍感になったとしても、傷ついたという事実は変わらない。
それは、決して自分をないがしろにしていいということではないからだ。
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